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お誘い


見回りをしているつもりが、逆に見られている気がする。
未鷺はいつも以上に全身に向けられる視線を気にしないようにしながら、いつも通り姿勢良く廊下を進んだ。
未鷺は婦警の衣装に加え、忍の用意した人員に薄く化粧をされている。
鳴鈴学園の生徒や、バスに乗って遠方からやってきたその他の客の目も引きつけていた。

『鳴鈴学園伝統のミスコン!今年は生徒会長が呼んだ特別ゲストも参加!午後2時に屋外ステージ集合、結果発表は4時〜』

未鷺は廊下のあちこちに貼られているポスターのひとつに目を留めた。
未鷺は結局エントリーしなかったが、みちるを観に行こうかと思う。

ミスコンは二年連続で靖幸の親衛隊長の千堂翼が優勝していた。
手芸部が作った豪華な衣装と本格的な化粧を施された彼らは芸術品のように美しい。
毎年ミスコンを楽しみに遠方から客が来る程だ。


未鷺はちらりと時計を見た。
午前11時を過ぎたところなので、見回りの未鷺の担当の時間は終わった。
午後1時から再び見回り当番なので、佐助と落ち合うことになっているが、それまでどう過ごそうかと考える。

とりあえず服を着替えるために風紀委員室に戻ろうとしたところで、山口野原と出くわした。

「あっ、未鷺!」

嬉しそうに駆け寄って来る野原は珍しく一人だった。

「その格好……」
「何も言うな」

野原は未鷺の全身を眺めるようにしてから頬を赤らめた。

「未鷺のこと探してたんだ!午後から一緒にまわろうぜ!慎一と陸と空も一緒なんだ」
「俺はいい」
「そんなんだから生徒会のみんなと仲良くなれないんだぜ!あいつら話せばいい奴だから、未鷺も友達になれるぞ!」

慎一のことも間口兄弟のことも未鷺は中等部から知っているが、言わないでおく。

「午後も風紀委員の仕事がある」
「祭のときくらい仕事のことなんか忘れて盛り上がるべきだ!」

分厚い眼鏡の奥の目が未鷺を見つめてくる。
未鷺は妥協案を出すことにした。

「これから少しなら時間はあるが」
「これから?」

野原は腕を組んで首を傾げる。
ずれたカツラが取れそうだ。

「生徒会のみんなは駄目って言ってたから、未鷺なら大丈夫か」

何やら一人で納得した様子の野原は未鷺に向けて大きく頷いた。

「俺が誘われたんだけど、未鷺も来ていいぜ!」

なぜか上から目線で言われた言葉に、未鷺は渋々頷いた。

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