青空
学園祭当日、早朝から風紀委員は集まっていた。
最終打ち合わせと衣装合わせのためだ。
鳴鈴学園祭は午前9時から午後6時までの長丁場だ。
未鷺は朝のうちにクラスのハンバーガーショップの裏方をやり、昼に二回一時間ずつ風紀委員の見回りをする。
その時の衣装を着て、未鷺は不快そうに眉をひそめた。
「さすが菖蒲さんっすねー!すごく似合ってます!すごく!」
「ああああそのヒールで踏んでほしい!逮捕して下さいいい!」
「な、生足……」
白いワイシャツに紺色のネクタイと帽子、それと同じ色のミニスカートを身につけ、黒のパンプスを履いた未鷺が現れると、警官の衣装を着た委員達はわいた。
滅多に曝されることのない白い太股に彼らの興奮が高まる。
「なぜ俺だけが女性警察官の衣装なんだ」
未鷺が冷たい声で尋ねると、委員達の視線は未鷺と仲が良い佐助に集中する。
「な、なぜって、他の委員は似合いそうにないからっすよ」
しどろもどろになりながらどうにか佐助は答えたのだが、それが間違いだった。
「佐助」
「なんすか……?」
「お前も着ろ」
サイズ違いの婦警の制服を突き付けられ、佐助は後ずさる。
筋肉質な彼がスカートを履いたらただの変質者だ。
「い、いや、あの」
必死に断る方法を考える佐助に容赦ない未鷺の視線が刺さる。
「佐助」
「……はい」
涙声で佐助は頷いた。
「菖蒲さん、サイズは調度でしたか」
「ああ」
ウエストサイズに合わせたスカートの丈が短かったのが気になったが、未鷺には女子のような恥じらいはなかった。
「制服に着替えてくる」
クラスのバーガーショップで婦警姿でいる訳にはいかなかった。
着替えのために奥の仮眠室に未鷺が引っ込むと、委員達は沸き立つ。
「脚エロすぎ……」
「菖蒲さんに尋問されたい」
「俺ちょっとトイレ」
がやがやと騒ぐ委員達の中で、婦警の制服を押し付けられた佐助だけが浮かない顔をしている。
しかし、窓の外の雲一つない青空を見てため息を吐いた後、微笑む。
「楽しい学園祭になればいいなぁ」
慌ただしい雰囲気に心が弾んでいた。
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