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裏側の人達


「羽藤みちる君」

先程自分がしたような調子で背後から声をかけられてみちるはびくりと振り返った。
声で予想はついていたが、そこにいた人物を確認してみちるは改めて驚く。

幼稚部から鳴鈴学園にいるみちるはその整った顔の持ち主をよく知っていた。

「或人様……」

一見地味な外見をしている或人だが、近くで見るとこの学園でも有数の美形であるというのがよくわかる。
見た目が可愛いからとちやほやされることもあるみちるも一般生徒に過ぎない。
或人と話すのは初めてで、緊張した。

「夏休み前からよく菖蒲さんと話してるみたいだね!」

気軽な様子で話してくる或人に、それでもみちるは身震いした。
或人は未鷺の親衛隊の副隊長だ。
自分は未鷺に近付いたことで制裁されるのかもしれない、と思ったのだ。

「え、あ、ごめんなさい」

みちるが慌てながら謝ると或人は人当たりの良い笑顔の前で手をひらひらと振った。

「謝ってほしいんじゃない。菖蒲さんに気兼ねなく接する人がいるのはとてもいいことだから」
「……はぁ」

だとしたら或人はなぜ話しかけてきたのだろうかとみちるはさらに不思議に思う。

「ただね、あんまり菖蒲さんを困らせるのはやめてほしいんだよね!」

戸惑うみちるに或人はそのまま言葉を紡ぐ。

「みちる君の行動って鬼原を奪おうとしてるというより菖蒲さんに構ってもらおうとしてるように見えるから」
「えっ……」

みちるはどこまで或人が知っているのだろうか、と思い目を丸める。

「ね、お願いね」

念を押すと或人はくるりと背を向けて去って行った。






「はい、翼だけど。これから靖幸様のところに行くんだから手短にしてくれる?ああ、生徒会の皆様が。学園祭を山口野原とまわる約束をしてたんだ、ふーん。え?それはむかつくけど。山口野原をどうしたら良いかって?そんなの自分たちで考えればいいでしょ。ちょっとは頭使えないの。じゃあいいこと教えてあげる。山口野原は馬鹿素直で騙され安い。そして下戸。酒を飲んだらすぐに酔っ払って記憶を無くす。いい?俺は知ってることを教えただけで何をしろって指示は出してないんだから全部君達の責任だからね。……お礼なんていらない。もう切るから」

「俺は情報を与えただけだからあの人を裏切ってないよね」

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