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平和?


風紀委員室で和食の皿が乗ったテーブルを挟み、未鷺と佐助はのんびりと昼食を食べていた。

「しっかし、平和っすねー」

冷や奴を箸で掴みながら佐助はほのぼのと言う。

「宿泊学習のとき菖蒲先輩がEクラスの生徒を投げ飛ばしたのが広まったらしいっすよ。逆らっちゃいけないって思ったんじゃないっすか」
「押さえただけだ。飛ばしてはいない」
「えっ、そうなんすか?だいぶ飛んだって聞きましたけど」

未鷺が無言で見つめると佐助は「冗談っすよ」と慌てて頭を振った。
事件が減るのに越したことはないので、わざわざ訂正する気もない未鷺は静かに箸を進めた。

「あ、あとアレっすね。山口先輩。あの人最近は生徒会室にもあんまり行ってないらしくて、同室の人にべったりらしいっすね。それで制裁も減ったとか」

箸使いの上手い未鷺の箸先からぽろりとレンコンの煮物が落ちた。
珍しいこともあるものだな、と佐助は思った。

「……事件が減るのに越したことはない」

未鷺は皿の上のレンコンを掴み直し、自分に言い聞かせるように言う。

「そうっすね」

いつも通りの未鷺の淡々とした答えを気にする様子もなく、佐助は手を合わせてから食器を片付け始めた。




「あーやめさん」

移動教室の授業へ向かおうとしていたところで知った声に呼び止められ、未鷺は振り向いた。

みちるがにこりと口角を上げて立っている。

「何だ」

みちるが走り寄って来るのを待って尋ねた。

「勝負しよう?鬼原をめぐって」

びしっと指を突き立てて言ってくるみちるを、未鷺は無表情で固まったまま見つめた。

「学園祭のミスコンで上位だった方が勝ち。ただし参加しなければ試合放棄で負け」

黙ったままの未鷺にみちるは詳細を説明した。
学園祭のミスコンとは女装した男子生徒達がその美しさや可愛さを競うものだ。
学園祭という関係上部外者も投票出来るので、順位に波乱が起きることもある。
しかし、普通に勝負したら未鷺に勝てるはずがないことはみちるにもわかっていた。
勝算は未鷺のプライドの高さにある。
未鷺が人に媚びを売るような人柄ではないのは有名だった。

「俺は出ない」

みちるにとっては案の定、未鷺は答えた。

「上位入賞者は好きな人とツーショット写真を撮るんだよ。僕はもちろん鬼原と撮るよ。菖蒲さんに勝ったらね」

そしたら鬼原と僕噂になるかな、と幸せそうな顔で言いたいことだけ言って、みちるはスキップで去って行った。

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