[携帯モード] [URL送信]
多数決



夏休みが終わった生徒の次の楽しみは学園祭だった。
校外の客が来るのもあって、風紀委員の活動にもいっそう力が入る。

生徒会室に資料を請求して風紀委員室に戻ると、賑わっていた委員達が未鷺を見てぴたりと口を閉じた。
慌ててホワイトボードに書かれた文字を消す委員もいた。

「菖蒲君お帰りなさい」
「……委員長」

風紀委員長の忍が未鷺のいないうちに来ていたようだった。

「今多数決をとって、学園祭中の見回りは警官のコスプレをすることが決まったところなんです」
「衣装を購入する費用はありません」
「それは心配いりません。演劇部から借りられます」

忍は善良そうな笑顔を浮かべて続ける。

「あとこれも多数決で決まったのですが、菖蒲君には婦人警官のコスプレをしてもらいます」

未鷺は委員達を鋭い視線で見回した。
委員達は身を強張らせて未鷺から視線を逸らした。

「さて、学園祭の大事な決定もしたことですし、僕はおいとましますね」

お疲れ様でした、と忍が言い終わる前に、未鷺は動いていた。
委員達は忍の身体が宙を舞うのをあんぐりと口を開けて見ていた。
床に転がされた忍は「痛いですよ」と言いながら立ち上がる。

「どうぞ出て行って下さい」

冷たく言い放った未鷺に青ざめて、忍は部屋を後にした。

「仕事に戻れ」

委員達に向き直って未鷺は自分もパソコンの前に腰を下ろした。

『菖蒲未鷺には婦人警官のコスプレ(ミニスカート)をさせる』という意見への多数決で、反対票を投じた委員がいなかったことは、決して未鷺には言わないでおこう、と委員達は心に決めた。

(次へ#)
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!