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寛容


アイスの入ったコンビニ袋を提げて元秋と未鷺は青空の下を歩いていた。

「お前、何時に迎えが来るんだ?」
「10時には駅にいると言っていた」
「昼飯ぐらい食ってけばいいだろ」
「午後から予定がある」

今日未鷺と別れたら夏休みが終わるまで会えない。
元秋は何とか引き止めたいと思ったが、無理だとわかっていた。
未鷺には元秋の知らない生活がある。

「長えな、夏休み」
「……ああ」

元秋が袋を持ち替えると中のアイスががさりと音を立てた。
空いた手で未鷺の手を握る。

未鷺は重なった手を見下ろしたが、それについては何も言わなかった。

「早く戻らないとアイスが溶けてしまう」
「そうだな」

答えながら元秋は溶けるアイスなんて気にせずこのまま未鷺の手を引いてどこかに攫って行けたら、と考えていた。





「元秋は誰に似たんだか頭が良くてね。うちの子が鳴鈴学園の特待生だなんて」
「うるせえよ親父」
「それに未鷺君みたいな良い子と友達になれて、本当についてるな」

余計なこと喋んなよ、と元秋は父親を睨み見た。
鬼原家全員と未鷺が居間に集まっている。
未鷺はアイスを食べながら穏やかな表情で聞いていた。

「これからも仲良くしてやってくれよ」

元秋と似た顔で言う彼の父に、未鷺は大きく頷いた。

「はい」





「未鷺送って来る」
「おー、未鷺君また来てね」
「ありがとうございました」

元秋が未鷺と一緒に家を出ると、譲と映子は顔を見合わせた。

「あれって、友達っていうより」
「ねえ。まあ――」
「誰を好きになろうと自由だ」

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