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おはよう


「未鷺くーん、お兄ちゃん!朝だよー」

少女の高い声が朝の重い頭に響く。
部屋に入って来た冬歌は元秋に馬乗りになり揺すった。

「お兄ちゃん朝ぁー」
「わかったから降りろ」

既に目を覚ましていた未鷺は上半身を起こし、その光景を驚いて見つめていた。

「あと15分で朝ごはんだからね!」

言い残して冬歌が部屋から出て行くと、元秋はふぅと息を吐いた。

「朝っぱらからうるさくて悪いな」
「いや、本当に仲が良いんだな」

未鷺が微笑むと、元秋も口元を緩めた。

「後何年かすれば兄ちゃんうぜえとか言ってくんだろうけどな、どうせ」
「それでも可愛いんだろう」
「まあな。うちの遺伝子だから冬歌もかなりでかくなって可愛いげもなくなるかもしんねえけど、それでも妹だからな」

兄の顔で語る元秋を見て、未鷺は羨ましいと思った。

「冬ちゃんは幸せだな。良い兄がいて」
「あ?9個も歳が離れてればこんなもんだろ」
「俺も兄と9歳差があるが、今は仲が良いとは言えない」

未鷺は兄が高校生だった頃は、と思い出そうとしてやめた。
何か言ってこようとする元秋に背を向けて、パジャマ代わりの甚平を脱ぐ。

質の良いTシャツに袖を通しながら未鷺は元秋を一瞥する。

「でも、お前たち兄妹を見てたら兄ときちんと話してみようと思った」
「それがいいな」

背中から未鷺を抱き寄せながら元秋が言った。
元秋はスキンシップが多いな、といつも思う。
その手をやんわり外した。

「お前は早く着替えないと朝食に間に合わない」

時間厳守な未鷺はさっさと着替えて顔を洗いに行く。

「未鷺君、おはよう」

洗面所にいた譲と入れ違いに言われる。

「……おはようございます」

朝起きたら挨拶出来る家族がいるというのは、なんて幸せなのだろう。
冷たい水で顔を洗い流しながら思った。

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