不知火
死に物狂い
‘死に物狂い’という言い回しがある。
死んでも構わないという気持ちで物事に尽力する様を言い表す言葉だ。
五年い組に在籍する名前(♂)は、学園の誰よりも其れを体現している男だった。
朝から晩まで鍛練、鍛練。
授業、委員会皆勤は当たり前だが、耳と目は二つずつあるのだからと片手には必ず参考書物。
一瞬をも惜しむかのように睡眠も食事もそこそこに、会計委員長顔負けの隈を標準装備でまた、鍛練。
あまりに鬼気迫るその生活様式は周囲に堅固な壁を築き上げ、誰も近づけようとしない。
故に、彼を良く知る者は現状、皆無。
学園長にすら、出身と名以外口を閉ざし続ける。
身を粉に学ぶ理由も。
目的の有無も。
誰も知らない、そんな彼の物語。
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