[携帯モード] [URL送信]
1
「ぅ……。」
「…………。」



「あー……。」
真っ暗な部屋からロビーに出ると、
光に目が細められ、
慣れるまでしばらくかかってしまう。

「それにしてもイマイチだったよなー。ノレないっつーか。」
「……う、ん」
「ハハッ、オマエでもラストの辺泣いてたんじゃねぇ?肩震えてたぞ。」
「え、う、うん……。」

今話題の恋愛大作を見に行こうと奈子に誘われたが、
オレは奈子の顔ばかり気になって内容なんてみちゃいなかった。
奈子はそんなオレの横で肩を震わせ、涙を堪えていた。

今も少し目の淵が赤い。


「……。」
押し黙ったまんまの顔を覗きこむ。

「……どうした?」
「チカン……。」
「は?」
「隣に座ってたおじさん……。」



観音開きの扉を音を立てて開けると、出口に向かうヤツらの視線がオレに集中した。
気にせず元いた席に駆け寄った。
が、そこにはもう誰もいない。
スクリーンにはエンドロールが延々と流れているだけだ。

「クソッ!」

急いで奈子の元に戻ると、
隅のベンチに座って泣いてる……。
震える肩に手を回し、
後ろから抱き締めた。


「……悪ィ。オレ気付いてやれなくて。」
「ううん、コウは悪くない……。」

オレの腕の中で首を振り奈子は小さく、弱々しく微笑んだ。

抱き締めた腕に力を入れる。
耳にキスを落として囁いてやる。

「……二度とこんな事させねぇ。オレがオマエを守るから。」
「コウ……。」
「いつでも、オマエを見てる。」
「……ふふっ。」
「……笑うトコじゃねぇだろ。」

奈子は、肩に回したオレの手に両手を添えて嬉しそうに笑っていた。

[次へ#]

1/5ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!