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結局オフクロに押し切られて奈子は「じゃあ……少しだけ。」と言って靴を脱ぐ。
階段上がって部屋に入れれば、キョロキョロと物珍しげに見渡しはじめて。


「綺麗にしてるんだねー。さすが、ハリー!」
「ま、まーな。」


なんて嬉しい答え返ってくるし。
オレの部屋に女なんて入るのは初めてで。
しかもそれは好きなヤツ、で……


「お、ギター」


なんか余計なのも約一名いるけど。



ノックがしてオフクロが顔を出した。ニコニコと笑ってるし何だよって追い出そうとしたんだけど。


「佐伯君から頂いたの。」
「えっ」


手渡されたお盆には紅茶と旨そうなケーキが乗ってる。
思わず振り返った視線の先に笑顔の奈子とバツの悪そうな佐伯の顔。


「佐伯君が作ったんだよ。ねっ。」
「つ、ついでだし。」
「……へー」


ケーキには白いクリームに苺が乗ってて完璧な出来。デコレーションといいセンスといい文句ナシに旨そうだ。


「私も手伝ったんだよ。」


こことここ。そう言って奈子がクリームを指差した。


あー……本当だ、
ちょっと崩れて……。


「蝋燭もあるよ!」


ジャーンと取り出した蝋燭をケーキに一本一本を立て始めた。17本立て終えると満足そうに笑う。


「電気も消さなきゃ。」


ウキウキと動く奈子に真ん中に座らされて、火の付いた蝋燭に息を吹こうとすれば。ちょっと待ってと止められた。


「歌、歌わなきゃね!あ、佐伯君ギターの腕の見せ所だよ!」
「お、おう。」


ハイッとギターを手渡す奈子に佐伯が少し引きつってる。



弦を弾いた途端に物悲しいリズムのバースデーソングが響く。


「……。」
「……なんだよ。」


オレ様の貴重な時間を割いた結果がコレか。


ジッとケーキを見つめる。ちょっとは上手いとか思ったのは気のせいだったかもしれない。


「……し、仕方ないだろ!こんなの練習してないんだから!」
「じゃ、じゃあ一緒に歌おう!」
「いや、それは……」
「もう!」


オレが弾いてやろうかとも思ったけど、なんか違うなと思って止めた。手持ちのフォークを弄んで待つ。


元気だなー……
コイツら。


真っ暗な暗闇の中で佐伯と奈子が揉めあう度ケーキの上の蝋燭が小さく揺れる。


「あーもう!いいだろ。お前が歌、俺がギター!!」
「……うん。分かった!」
「せーの」
「ハッピーバースデー、トゥ…」


たどたどしいギターの音に乗ったちょっと音程のズレたバースデーソング。


「ハッピバースディ、ディア……」


こっちに気付いたが奈子がニッコリと笑う。


「ハリー。おめでとう。」


ギターの手を止めた佐伯も少し照れながら顔を向けた。声ちっちゃくて聞こえなかったけど、口動いてた。




蝋燭の灯に照らされた、忘れられないオレの誕生日。


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あきゅろす。
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