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屋上から見える奈子はいつも通りニコニコと笑ってる。


……ハァ。


ギターを持ってはみても弾く気にならない。玄関先に消える奈子を見ても勿論ダッシュなんて出来ねぇし。
ベンチに座って時間を潰した。



廊下に戻れば掲示板の前に人だかり。張り出されたテスト結果に、やだぁ。だの、うそぉ!だの声が響く。
結果は分かり切ってたけど、一応見る。補習に食い込んだらシャレになんねぇからな。


この前の中間なんて最悪で。
ギリギリまで渋ったかいもなく、オフクロに額に入れて飾られた。



ハァ……。


何度目かの溜め息ついて下がってた視線を上げた。

目に飛び込んでくんのは、上位に仲良く並んだ奈子と佐伯の名前。
オレの名前は補習ギリギリ。


いつもだったら、オレには音楽があるし。なんて言えっけど……


「あー負けちゃった。」
「ふっ……当然。」


横には奈子と佐伯が見えるし。聞こえるし。


並んだ二人と離れて底に沈んだままのオレ。ますます距離を感じて背ぇ向けようとしたら、奈子と目が合って嬉しそうに駆け寄ってくる。


「あ、ハリー!すごいんだよ!!佐伯君、大検討の4番!!」
「声でかい。……大袈裟なんだよお前は。2番上がっただけだし。そんな言うほど大した事、無い。」


そう言う佐伯の顔はメチャクチャ得意そうでムカツクくらい笑顔だ。


勉強じゃ佐伯にかなわない。
勉強も、か……。


ハァーと息をつくオレなんて二人共気にもとめない。


「だって、すごいよ!あんなに忙しいのに。……うん、すごい。」
「……そ、そうか。」


それどころかキラキラと見ては褒める奈子に佐伯は照れながら髪を掻く。


……何か二人だけの世界ってヤツ?


声掛けられた時上がりそうになった心もズッシリ重くなる。
黙って教室に向かおうとすると奈子がやっとオレに気付いた。


「あ、ハリー!!今日の練習……」
「パス。……明日ライブあっし。準備してぇんだ。……ワリィ。」
「……そ、っか。そうだよね。頑張ってね!!」


オレが言えば奈子はこれ以上突っ込まない。


ま、こんなモンだよな……。
毎日の練習もオレが誘ってただけだし……。


考えるのは嫌なコトばっかで。二人から出来るだけ一刻も早く離れたい気持ちでいっぱいだった。


HLが終わって一限が始まる。全く頭に入らない英文が響く中、机に突っ伏したまま前の佐伯を見た。


テストの結果を囁きあう女達が佐伯を見ては息をつく。
気にする様子も無く飄々とノートにペンを滑らしてピンと伸びた背筋にノートを取る姿はどっから見ても優等生。……そんで、いつも以上に身の入らないオレ。


教科が代わるごとに小言を言われたけど全てシカトして過ごした。

机に突っ伏したままのオレを時々不思議そうに振り返る佐伯に気付いちゃいたけど顔を上げる気にもならなかった。


昼休みになって二人が今ごろ音楽室で何を話してるのかとか気になって仕方なかったけど。



一人で過ごした。
イヤホン指して聞こえる音を遮って。


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あきゅろす。
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