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そのままベンチを指差した彼女に、誘われるままついてくと。
「あの、ごめんなさい」
「あ?何が?」
思いがけず彼女に謝られる。
なんでオマエが謝るんだ?どっちかっていうと悪いのはオレの方。
「さっき邪魔しちゃってたでしょ?ギターの練習。」
「まー、別に……。」
昼飯食ったら大体ダラダラくっちゃべって終わりだしな。
ギターは、佐伯がガラス戸に閉まうだろうし何か言われる事も無いだろ。
「お弁当もひっくり返っちゃったし……」
形の崩れた弁当の中身を申し訳無さそうに見る。持って帰るから気にすんなっつても、せっかく作ってくれたのに勿体ないよ。と返される。
「あっ、私もお弁当作って来てるの。」
「へっ?」
「交換しながら一緒に食べない?あっ針谷君が良かったらだけど……」
……しっかりしてんだな。いい嫁さんになりそうつーか……
ち、違ーうっ!!
違うぞ?
今の無し!!
……オレのとは言ってねぇ!!
……ただそうなったらいいなーとは思ったけど!
悶々とする気持ちを振り払って二つの弁当箱をベンチに並べる。
小さな弁当から卵焼きを一個摘んで口に入れたけど、残念ながら今のオレには味なんて分かりそうもなかった。
彼女はオフクロ自慢のタコ型ウインナーを頬張ってはしきりに感動してた。食ってる姿は幸せそのものって感じで横で見るオレも悪い気はしない。
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