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息を戻す度彼女の胸が上下に揺れてやっぱりオレの視線は下に下がる。
それでも黒タイツの足首の細さが目に飛び込んで来るんだから、緩む口元を押さえるのに必死になる。


落ち着け、
落ち着け……!!
さっきの挽回のチャンスじゃねぇか!!
……み、見とれてる場合じゃないっつーの!!


「な、なんだよ。」
「あ、あのね、コレ……針谷君のでしょ?」


少し上擦ったオレの声にも全く気にする様子もない。彼女は見慣れた包みを差し出した。


オレの弁当箱……
持って来てくれた……んだよな?


「あ、あー……サンキュ。」


弁当箱を受け取ろうと伸ばした手が包みを持った彼女の手に一瞬触れて。


「!!」


慌てて手を離した瞬間、持ち主を失った弁当箱は床に落ちた。


カシャンと音を立てて半分程残っていた弁当箱は見事にひっくり返っていた。


「ご、ごめんなさい!!」
「い、いや。」


丁寧に包まれていたとはいえ、きっと中身はぐちゃぐちゃだろう。
それよりオレはオロオロ落ちた弁当を屈んで拾う彼女の方が気になってた。


「ちょ、ちょっと待ってて!!」
「はっ?」


いきなり落ちた弁当を渡されて、待っててね!!と念を押される。
くるっと向いて走り出したと思ったらどんどん離れて購買へ向かってく。


……足、早ぇ!!
スッゲェ駿足……
もうあんなトコいるし。


ギュウギュウに詰まったヤツらの間を小柄な体でスルスル抜けて、あっという間に見えなくなった。


「ハイ!!……お詫びってワケじゃないんだけど。」


帰ってきた彼女が差し出したのは今一番人気の゛極まろメロンパン゛。


「あ、甘いのは嫌いだった?」
「……いや。」


コレ……
新メニューでめちゃめちゃレアなのに。


「……スゲェ……」
「えっ?」
「いや、スッゲェなオマエ!!!これ食ってみたかったんだよ。……サンキュ!!」


食ってみてぇけどあんなトコ行ったらセット崩れちまうし。


「良かった!!あのね、真ん中の列より端っこの方が狙い目なんだ。」

軽く感動するオレの横で彼女は照れながら熱弁を振るう。そして……、


「へへっ、自分の分も買って来ちゃった。」


そう言って、ジャーンと同じパンを見せた。


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