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「さ、さみぃー!!」
「寒い!!」
夕暮れ時の臨海公園は 人の通りもまばら。
3月に入ったといっても 外の気温はまだまだ低い。
底冷えしそうな寒さのせいか 目的の場所へと急ぐ足も 私達の声に いちいち反応を返す事もない。
遠くに見える大観覧車に続く煉瓦道を 二人で並んで ゆっくり歩いた。
初めの頃は、
……遅い!!
シャキシャキ歩け!!
なんて 言われてたっけ。
最近のハリーは なんでも 私のペースに合わせてくれている…気がする。
ちょっと 嬉しいな。
「……なに、ニヤニヤしてんだ?」
「えっ?……私、ニヤニヤなんてしてないよ?」
「いや、してた。こーんな顔して。」
「もう!!」
頬を上げて ニヤニヤ笑いを作るハリーに お返しとばかりに口を開いた。
「゛困りました゛!!」
「……は?」
私の言葉にキョトーンとしたハリーは 頬に当てていた両手を下げた。
「゛針谷くんも、何か悩み事がある様で。授業もちっとも耳に入らない様なんです。僕の話、そんなにつまらない?゛……若王子先生の真似!!……似てた?」
「ハハッ、似てねぇ〜!!」
釘を刺すつもりが ケラケラお腹を抱えたハリーに 笑われてしまった。
「……授業ちゃんと聞かなくちゃ。先生、可哀相だよ?」
「どの口が言うんだ、ソレを。」
「うっ」
……そうでした。
どうやら私の醜態は ハリーの耳まで届いているらしい。
気まずさにうなだれかけた私に 伺う様なハリーの声が降ってきた。
「……なにか、あったのか?」
てっきり からかわれると思ってばかりいたのに。
その声色は なんだか柔らかい。
右頬あたりに強すぎる視線を感じて 私は 顔を逸しかけた。
だけど さっきまでの表情を一辺させ 眉を寄せるハリーの顔を見ると それも出来なくってしまう。
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