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なにやら難しい顔した席の主は 真剣に机に向かっていた。
その様子に肩を竦めて 机に一歩近付いた。


「……まさか、テスト勉強とか?」
「う……わっ!!」


覗きこんだ視線が合うと いきなりのけ反ったハリーは うぎゃっと奇声を上げた。

失礼しちゃう。


浅く睨みつけると 私と分かったハリーが
ホッとしたような それでいて マズい場面を見られたような
よく分からない顔をした。


「……なんだ、AAIか」


その言い方にムッとしたけど 気にしない事にした。


「佐伯くん、音楽室で待ってたよ?」
「あ!!もう昼か……」


しまった。と
気まずそうに ハリーは 無造作に頭を掻き始めた。
ピョンと跳ねた髪が
今日も決まってる。


「……今度の期末、そんなに危ないの?」
「それはいつも……じゃなくて。オレが、勉強なんてするかよ。
そんなん、なんとでもなる!!」


オレはハリーだぞ?
ふんっ と 更にのけ反った姿勢を取るハリーから 視線を外して机に向けた。

どうやら 机イッパイに広げていたのは 教科書なんかじゃないみたいだ。


「……最新アクセサリー……?」


もしかして、
これを 授業の時から見てたのかな?


期末試験も真近で どことなく雰囲気の重くなる時期だっていうのに。
全く気にしませんーって所は なんだかハリーらしい様な…。


とにかく ハリーが時間を忘れるくらい見入ってしまう位 魅了的な何かが この雑誌に載っているらしい。

それに興味を持った私は もう一度雑誌を覗きこんだ。


「……今度のライブの衣装の参考、とか?」


ご丁寧にも マーカーで○がつけてあるソレは どっちかというと女の子向けの華奢なデザイン。

ハリーのイメージと どこか違う気がして 私は首をかしげた。


「い、いや、これは……その〜。
な、なんでもねぇ!!
……オマエには一切関係ない事だから、気にすんな!!」


関係ない……


その言葉にズキンと傷ついた私に ハリーは ちょっとマズいって顔をした。
だけど それは一瞬で。

ハッと気付いた様に
小脇にバサバサと雑誌を抱えると ピシッと上げた手でじゃあな!!
と ハリーは 自分の教室から出て行ってしまった。


……もう 予鈴が鳴っちゃうのに どこ行くんだろう。


ハリーの 大きすぎる声と リアクションのおかげで さっきから注目を集めていた視線が 今は残された私一人に注がれる。


ハリーはとうとう 予鈴が鳴っても教室に戻ってこなかった。

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