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「やい幸之進!」
「ああ?」


オレの機嫌は不機嫌MAX。
大嫌いな名前を呼ばれればなおさらだ。

振り返った先には誰もいない。
ずらした視線を下ろせば、キャンキャン騒ぐマスク姿のガキが一匹。


「よくも、おねえちゃんを泣かせたな!」
「はぁ?」


うるせぇな。って、
ガキの言葉をシカトして前を歩く。

そしたら、いきなりノートみてぇな。
そんなモンが、
頭にカーンと当たって飛んでった。


「!!…いってー、このー…」


……こんの、ガキ!!
オレは今それどころじゃねぇんだ!

遊びなら他あたれって怒鳴ろうとした。
だけど、
そいつの顔みるみる変わってって……、
思わず言葉を飲み込んだ。

最近、よく見る……この顔。
しかも、つい、さっき……だ。


「ハリーにだったら、おねえちゃんを任せてやってもいいと思ったのに……」
「はー……落ちたぞ、ほらよ」


こんなちっちぇガキのくせに妙に使い古された、メモ帳。
ちょっとの興味でページを開く。
情報、と評価ぁ……?

針谷幸之進……、
こ、コイツ、よりによってオレの名前をフルネームで!!

その下には、
ライブで配るプロフよか断然細かいプロフィール。
だけど、オレのファン……ってワケでもなさそうだ。

……コイツのねぇちゃんって誰だ?

ふっと頭を霞めた考えがちらつく。
それは評価のあたりで、確信に変わった。


「……オマエ、めんたいこの…」
「オレと、おねえちゃんは!
ほっぺにチューした仲なんだからな!!」
「……はぁ!?ふざけんな!!オレだってな…」

うっ……
5月のアレは事故か。
さっきのは、ほとんど強引だし。
しかも……泣かせちまった……



マスクを外したコイツは、何やらじりじり近寄ってくる。
ちょいちょいと、手を振るコイツ。

……仕方ねぇ。

んだよ?って視線を合わせてやった。


「くらえっ、風邪菌クラッシャー!!」
「うぉっ、きったねぇ!!」


そのままアッカンベーとガキが走りさる。

……ゼッテェ許さねぇ!!

本気のダッシュでガキを追いかけた。
だけど一向に縮まらない距離の中、急に角度を変えて曲がったガキは、ビューと玄関に入ってく。

くっそー……
さすがは、小学生。
つーか、
筋トレ、甘ぇかも……

ゼェゼェと膝を付けば、めんたいこの家のまん前だった。

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あきゅろす。
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