3 「……じゃーさ、オレの練習にも付き合って」 「え……、コウも、好きな子…いるの?」 驚いたみたいにオレを見る顔。困ってんのか、傷ついてんだか一見したんじゃ分かんねぇ。 「面と向かって出来ねぇから。」 「え…」 オマエだって、ちょっとは傷つけばいいんだ。 「まず、なんだっけ。唇にタッチ?」 「え……あの、あっ!」 柔らかい唇。 ギターのせいで、 固くなった指の腹で撫でてく。 「次は……キス」 「えっ……や、だ」 「付き合ってくれんだろ」 ちょっと抵抗されたけどまうもんか。 押さえ付けた肩に力を入れた。 そしたらギュッとつぶった目先が震えて睫毛が揺れる。 柔らかい唇、に。 思いっきり吸い付いて、舌のざらつきまで味わう。 息をついた拍子に漏れた声さえ誘ってるとしか思えない。 コイツ……オレが、知らないだけで。 歯が当たるのもかまわずに、押し込めていけば舌からつっと流れた液。 「コ、ウ……」 「黙ってろ」 その吐息さえ逃がさない。 伏目がちの睫毛。 真っ赤で…戸惑うみたく、受け入れるような……その顔。 誰にでも向けてんのか? 大好きなめんたいことのキス。 交わす熱とは正反対に オレの気持ちはどんどん冷めていく。 「……コ、ウ、…やめて!」 もうどうにでもなれって、スカートの奥まで手を入れた瞬間。思いっきり突き飛ばされた。 壁に投げ出された体がやけにダルく感じる。 「……いってぇな」 「もうっ…やだ!……やだ!!」 袖口引っ張ってぐいぐいと唇を拭う。 そんなめんたいこにもカッとなってた。 ……なにより。 「オマエがしたいのって………だから、こーいう事だろ!!」 近くにあったイスを バンっと蹴り上げた。 それがガンガン音を立てて床に転がると、めんたいこはとうとう泣き出した。 それを見てハッとする。 けど、そんなんでこの怒りが収まるワケがねぇ。 「……コウのバカ!! コウ、な、んて大っ嫌い!!」 「…………っ」 走り去った拍子に肩が当たった。 伝った涙が、頬に残る。 今のが……結構 一番、…きた。 [*前へ][次へ#] |