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「……じゃーさ、オレの練習にも付き合って」
「え……、コウも、好きな子…いるの?」


驚いたみたいにオレを見る顔。困ってんのか、傷ついてんだか一見したんじゃ分かんねぇ。


「面と向かって出来ねぇから。」
「え…」


オマエだって、ちょっとは傷つけばいいんだ。


「まず、なんだっけ。唇にタッチ?」
「え……あの、あっ!」


柔らかい唇。
ギターのせいで、
固くなった指の腹で撫でてく。


「次は……キス」
「えっ……や、だ」
「付き合ってくれんだろ」


ちょっと抵抗されたけどまうもんか。
押さえ付けた肩に力を入れた。
そしたらギュッとつぶった目先が震えて睫毛が揺れる。

柔らかい唇、に。
思いっきり吸い付いて、舌のざらつきまで味わう。
息をついた拍子に漏れた声さえ誘ってるとしか思えない。

コイツ……オレが、知らないだけで。

歯が当たるのもかまわずに、押し込めていけば舌からつっと流れた液。


「コ、ウ……」
「黙ってろ」


その吐息さえ逃がさない。

伏目がちの睫毛。
真っ赤で…戸惑うみたく、受け入れるような……その顔。
誰にでも向けてんのか?


大好きなめんたいことのキス。
交わす熱とは正反対に
オレの気持ちはどんどん冷めていく。


「……コ、ウ、…やめて!」


もうどうにでもなれって、スカートの奥まで手を入れた瞬間。思いっきり突き飛ばされた。
壁に投げ出された体がやけにダルく感じる。


「……いってぇな」
「もうっ…やだ!……やだ!!」


袖口引っ張ってぐいぐいと唇を拭う。
そんなめんたいこにもカッとなってた。
……なにより。


「オマエがしたいのって………だから、こーいう事だろ!!」


近くにあったイスを
バンっと蹴り上げた。
それがガンガン音を立てて床に転がると、めんたいこはとうとう泣き出した。
それを見てハッとする。
けど、そんなんでこの怒りが収まるワケがねぇ。


「……コウのバカ!!
コウ、な、んて大っ嫌い!!」
「…………っ」


走り去った拍子に肩が当たった。
伝った涙が、頬に残る。


今のが……結構
一番、…きた。

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