回想
あの方は、いつもそうだった。
決して僕を見てはくれない・・・。
あの方と僕たち副会長親衛隊は、他の生徒会役員とその親衛隊達との関係とは決定的に違うところがある。
それは、僕達、副会長親衛隊は、副会長をお守りするためだけに、機能している組織であって、決して制裁は行わないということに誇りを持って行動している。そんな僕達を、あの方は信頼して下さっているという所だ。
他の生徒会役員、特に会長は、日頃は邪険に扱っている親衛隊を性欲処理の道具として利用していたし、
その逆に、面食いで有名な会長に抱かれた、親衛隊員はみんなの嫉妬の中、優越感に浸っていた。
その結果、会長に抱かれた親衛隊員は我が物顔で学園を練り歩き、みんなの嫉妬は、生徒会など、人気の生徒に近付いた見目美しくない生徒を制裁と称して、苛立ちの捌け口に利用していた。
そして生徒会は、散々利用しておきながら、そんな親衛隊を蔑んで見ているんだ。
けれど、あの方は違った。
そして、僕達も・・・。
僕たちの中には、信頼を良い様に利用して、あの方に近付こうとする者たちもいなかったし、あの方が、僕達を必要としてくださった時や、僕達親衛隊幹部が判断して、必要と思った時だけ、行動に移していた。
そんな僕達だからこそ、あの方の信頼を勝ち得ることが出来たんだ。
そういった関係もあり、僕は副会長親衛隊隊長という立場上、今までに何度かあの方の近くに行く事があった。
特に、行事ごとの時は、興奮した生徒達から、お守りするためにお側に控えているのも、僕達親衛隊の役目だった。
親衛隊を、信頼して下さっているあの方は、いつも、労(ねぎら)いの言葉を掛けては、優しく接してくれていた。
そう、僕以外の親衛隊には・・・。
ご不興を買った覚えは全く無いのだけれど、僕にだけは、いつも、笑顔も視線も向けては下さらない。
貴方の瞳に、映る事ができたなら、どんなに幸せなことだろう・・・。
それが僕の願いであり、望みでもあった。
決して叶う事はなかったけれど・・・。
そうして、あの方は僕にとって、どんどん遠い存在になっていったんだ・・・。
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