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登校




 朝ごはんも済んで洗い物も終わらせた僕は、ノンちゃんと一緒に寮を出た。


 学校までの道のりを今日はいつもより時間があるからゆっくりと歩く。綺麗に舗装された歩道の脇には、季節の花が植えられていて、一年を通して花を楽しむことが出来る。隔離された学園は、空気も澄んでいて、春先の今は鶯の鳴き声を楽しむことが出来た。


 この学園に入ってよかったと思う瞬間だよ。


 隣を歩くノンちゃんは、その風景とよく似合っていて、きっといつかは本当に王子様が迎えに来てくれるお姫様のような雰囲気を醸し出していた。


 なんだかメルヘンチックなノンちゃんに、にこにことそのことを伝えたら、メルヘンなのはユキちゃんの頭の中だけだと言われた・・・。頭から花でも咲いてるんじゃない?って僕の髪を掻き分けている。




 うぅ・・・。ひどい・・・。


 ノンちゃんは、「冗談だよ」と僕の髪を手櫛で整えてくれた。


 お互いの顔を見合わせて、くすくすと笑っていると、いつの間にか学校に着いていた。




 廊下を歩いていくと、僕たちの姿を目にした皆が次々と道を譲ってくれる。


 優越感に浸れると、同じクラスの子が言っていたのを聞いたことがあるけど、僕は苦手。


 憧れられているどころか、敬遠されているだけじゃないのかな?皆、僕とかかわりたくないのかな?って思っちゃう。


 気分が落ち込んで、自然と口数が減ってくる。それに気づいたノンちゃんが、「早く行こ?」と手を引いて、教室まで早足で連れて行ってくれた。


 教室に着くと、どこかいつもよりおかしいことに気がついた。どこがどうという訳じゃないけれど何だかいつもと様子が違う?


 ノンちゃんも同様だったようで、「どうしたの?」と、隣の机の子に話しかけていた。隣の子は、ノンちゃんに話しかけられたのが嬉しかったのか、顔を真っ赤にしながらなにやら説明している。


 僕は、少し気になったけど、早く重いかばんを置きたくて、自分の机に向かった。


 かばんから机の中に教科書を移し変えていると、ノンちゃんがこっちにやって来て、




「どうやら転入生が来るみたいだよ?」


 と教えてくれた。

 
 あんまり興味の無かった僕は、それ以上掘り下げることはしなかった。





 その転入生が来ることによって自分の未来に暗雲が立ち込めていたことにも気づかずに・・・。






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あきゅろす。
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