月明かりの部屋
「・・・雪、くん?」
背中全体に、彼の温もりを感じながら後ろを振り返ろうとした。
けれど・・・
「・・・優希。お願いだ、このままで・・・聞いて欲しいことがあるんだ。」
彼は、苦しそうにそう言うと、僕の肩に顔を埋めた。
やっぱり、雪くんだ・・・。
僕は、安堵して強ばっていた体の力をぬいた。
聞いて欲しいことがあると言いながらも、彼は中々話し出そうとはしない。
けれど僕は、唯黙って雪くんが話し出すのをジッと待つ事にした。
だって、雪くんは震えていたから・・・。
僕に後ろから覆いかぶさっている体が、腕が、顔が、小刻みに震えていて、まるで悲鳴を上げているようだったから・・・。
雪くんのその様子が痛々しすぎて、僕の胸の前にある彼の腕に、そっと手を重ね、ゆっくりと撫でた。
大丈夫だよ?
雪くんは、何にも悪いことなんてしていないんだから・・・。
だから、そんなに自分を責めないで?
少しでも、雪くんに僕の気持ちが伝わるように、ゆっくり、ゆっくり撫でた。
「・・・ごめん。俺のせいで・・・本当にごめんな?」
彼は、ギュッと僕を抱きしめなおすと、静かな嗚咽を漏らした。
雪くんこそが被害者なのに・・・彼は、自分を責めて泣いていた。
月明かりが降り注ぐ部屋で、僕は静かに嗚咽だけを聴いていた。
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