雪の部屋
雪くんの部屋の前に着き、プレートの名前を確認する。うん、間違いない。
西浦龍馬・星野雪の文字に、安堵した僕は、来るときの勢いとは、裏腹に、躊躇いながらもチャイムを押した。
しばらく、待っても応答が無い。
預かってきてよかったと、龍馬君に渡されたカードキーを使い、ドアのロックを外した。
頼まれているからとはいえ、人の部屋だ。ドアを開けてもいいのか迷いながらも僕は、ドアのノブに手を掛けた。
カチャ
ドアは軽い音を鳴らすと、ゆっくりと押し開くことが出来た。
ドアの隙間から、そっと入って静かにドアを閉める。
中を見渡してみると、
物のほとんど無い玄関は、薄暗くて閑散としていた。
ゴメンね?雪くん、勝手に入るよ?
暗闇の中、できるだけ音を立てないように靴を脱ぎ、個室へと向かった。
自分の部屋と同じ造りとはいえ、ふたつある個室のドアに、どちらが雪くんの部屋なのか見分けがつかなくて困ってしまう。
けれど、今は非常事態だ。
間違って中に入っても、龍馬君なら許してくれるだろうと、一番近いドアのノブに手を掛けた。
どうやら鍵は掛かっていないようだ。
鍵が掛かっていないのなら、龍馬君の部屋かも知れないとも思ったけれど、一応確認してみることにした。
ゆっくりと、ドアを押し開けると、やはり中は真っ暗で、人がいるかどうかまでは窺い知る事ができない。
もしかしたら、寝ているのかも知れないとドアを閉め、電気を点けずに、月明かりを頼ってベッドまで近付いた。
ベッドは、人型に盛り上がっていて、布団から温もりを感じることが出来た。
良かった、雪くんの部屋だ。
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