土下座
すべてに疲れ切っていた僕は、寮の部屋のベッドで横になっていた。
ノンちゃんは、僕に気を使ってか、部屋に閉じこもってしまっている僕を放っておいてくれていた。
何も考えたくないと、うとうとしていると、部屋に来客を伝えるチャイムが鳴り響いた。
しばらくすると、ノンちゃんが出迎えたようで、ドアを開ける音が聞こえて来た。
こんな時間に誰だろ?と思っていると、なんだか騒がしい声がする。
どうやら言い争っているようだ!
焦った僕は、ベッドから飛び起きて、自室のドアを開けて、声のする方に急いだ。
「なんの用だよ!帰れ!」
「お前に用はねぇ!川原に用があるんだ!」
「ユキちゃんに怪我をさせといて今更何言ってんの!?」
下駄箱を見て見ると、必死でドアを閉めようとしているノンちゃんが、ドアの隙間に足を挟みこんで、開けようとしている龍馬君と攻防戦を繰り広げていた。
「川原!!」
「うわっ!」
僕を見つけた龍馬君が力ずくでドアを押し開けると、その反動で軽いノンちゃんが尻餅をついてしまった。
龍馬君は邪魔臭そうに靴を脱ぎ捨てると、驚いて立ち尽くしている僕の前に立ち、いきなり土下座をした。
「わりぃ!川原!!すべては俺の誤解だった!すまねぇ!!」
「りょ、龍馬君!?」
「本当に悪かった!!」
龍馬君は床に頭を擦り付けながら、謝っていた。
慌てて僕は近寄って、
「や、止めて!?龍ま・・・ノンちゃん」
龍馬君を立たせようと、横に膝を着こうとしゃがんだら、ノンちゃんに止められた。
「・・・まさか、謝って済むとは思ってないよね?」
「もちろん、そんなこと思っちゃいねぇ!!」
龍馬君は、ノンちゃんの言葉に、土下座をしながら間髪入れず叫んでいた。
「当たり前だ!・・・お前に、僕の気持ちなんてわからないよ。」
「・・・・・」
「口から血を流しながら、僕に心配かけないように笑いかけているユキちゃんを見た時の僕の気持ち分かる!?」
「・・・すまねぇ。」
「自分は保健室のベッドで、動けないくせに、星野の心配ばっかりしてるユキちゃんを見ていた僕の気持ちわかる!?」
「っ!?・・・す、すまねぇ!」
「し、親衛隊だからって、・・・疑われたって泣いているユキちゃんを、ユキちゃんを抱きしめている僕の気持ちが、お前にわかんのか!?」
「もういい!!・・・もういいから。」
もう、いいから・・・。
だから、
お願い・・・
ノンちゃん、泣かないで・・・
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