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龍馬視点3





――――


――――――



「あ、あのこれ……」


バッチィ――ン!


恐る恐るペンダントを浅生に見せた瞬間、何故か頬を殴られた雪。


雪は突然の事に頬を押さえて固まっている。


俺も驚いて雪を見た後浅生を振り返ってみると、


「なんでアンタがそれを持ってんの?」


手のひらにフーフーと息を吹きかけながら浅生がそう言った。


コ、コイツ、理由も知らねェで殴りやがったのか。
口より先に手が出るタイプなんだなと思わず口元が引きつった。





雪と話した次の日、二人で浅生に会いに教室に行ったんだ。
どうやら川原は生徒会室にいるらしく、浅生が一人でいたんで、空き教室に呼び出したら……。




「ねぇ、固まってないで何とか言ったらどうなの?」


コイツ……ちっこいくせになんて迫力だ。
雪に向かって踏ん反り返って詰め寄ってきやがる。


とうの雪はと言うと、「龍馬ぁ」と俺に助けを求めて来ていた。
俺はそれにすかさず首を横に振ると、 


「悪ィな。俺もそいつ、苦手なんだ」


と思わず呼び出した事を後悔した。





俺の心を理解したのか、それとも川原の為に腹を括ったのか、浅生を呼び出したのには訳があると、雪は勢いよく事のあらましを説明しだした。


川原が部屋に来た時、偶然ペンダントを見ちまったこと。
少しでも優希との繋がりが欲しくて、同じものを作ったこと。
ペンダントを持っている事を紫藤に知られたこと。
そんで紫藤が雪と誰かを勘違いしてるんじゃないかってこと全部を出来るだけ分かりやすく事細かに説明している。
雪が川原を好きだった事とか俺が川原を怪我させちまった事で川原の事を諦めた事なんかは抜きにして。


すると、話が進むたび浅生の顔が段々恐ろしいものへと変貌を遂げてって……。


いきなり雪の頭を脇の下に抱え込むと、


「ねぇ、ライター持ってない?」


恐ろしい事を言い出すから必死で頭(かぶり)を振ったのだった。



チッと舌打ちが後ろから聞こえるものの、何とか雪を浅生から引きはがす事に成功した俺は胸を撫で下ろした。やっぱコイツ苦手……。
だが、大きく息を吐き出したのもつかの間、雪が俺の手をすり抜けて浅生と一定の距離を取りながら話しだした。まぁ、近づかないだけましか。



「なぁ、紫藤と優希って何か特別な繋がりでもあんのか?」


そうだ。それを話に来たんだった。
浅生のせいで、何が何だか分かんなくなっちまったが、要点はそれだ。


「なんで、そんな事聞くわけ」


冷たい視線を向ける浅生に雪の答えは。


「ちゃんと知っておかなきゃいけない事だと思ったから」


本来の雪らしい凛としたものだった。
浅生はその言葉を聞いて、フンと鼻を鳴らして腕組みしたものの、ちゃんと話を聞く体制をとっている。


「俺……中学の時、仲間とつるんでは夜の街でケンカに明け暮れてた時期があってさ、その時に紫藤と何回かあった事があるんだ。あの時アイツは、敵対してるチームの副総長でケンカばっかしてたんだけどさ。スッゲー楽しそうに笑ってたのを覚えてるよ。アイツ絶対に武道かなんかならってて流れるように相手を倒しては、一緒に戦ってる立花の容赦のなさに笑い続けてた」


その時の紫藤を思い出してるのか、懐かしそうな悲しそうな表情を浮かべる雪。

紫藤の昔を思い浮かべるって事は、自分の過去も思い出すって事で辛いんだろう。

そんな雪の横顔を無言で見つめがら、雪の話に耳を傾けた。



「それで俺、あの頃の紫藤の笑顔を取り戻してやるのが優希の為になるんだと信じて自分なりに動いてみたんだけど、全部裏目に出ちまった……。何も知らなすぎたんだ」


そう言ってはますます頭をもたげる雪。

雪の姿を間近で見ていた分、この言葉は重い。

本来雪がこの学園に編入してきた目的は平穏な高校生活を送るため。

だが、雪の行動は全校生徒を敵に回すものばかりだった。

毎日容赦のない嫌がらせや罵声の数々。

吐き気がする程の悪意の真ん中に身を置くのはどんなにきつかった事か。

それもこれも川原の為だと信じて疑っていなかったからこそ耐える事が出来たんだろう。なのに――


「優希のためにってそう思っていながらアイツを苦しめ続けていたんだよな……。こんな俺が今更何かしようなんて迷惑なのかも知れない。けど俺、このまま逃げだしたくないんだ。優希の為だけじゃなく、自分の為にも最後までちゃんと見届けたい! だから頼む! 知ってる事があるなら教えてくれ!」


そう言って、顔をいったんあげた後、ガバって勢いよく頭を下げた雪。

俺はその姿を黙って見続けていた。




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あきゅろす。
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