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龍馬視点2




「なんで勘違いしてんのか知らねェけど、ペンダントの事と言い、”ゆき”って名前と言い、やっぱ優希以外には考えられない気がする」


そう言って難しい顔をする雪に同意の意味で頷いた。


雪の四つ葉のペンダント。
あれは元々川原の首に掛かっていたものを雪が真似て作ったもの。

そんで”ゆき”って名だ。
川原の名前は”ゆうき”だが、アイツの親友である浅生が川原を呼ぶ時のあだ名が―――


『ユキちゃん』


もしかしたら見当違いなのかも知れねェ。
だが、一度そう思うとそれしか考えられないような気がして気ばかりが焦ってくる。
それは雪も同じらしく、


「……俺、優希を幸せにするどころか苦しめてばっかだったんだな」


「っ―――」


「最低だな、俺……」


そう言って苦しげに眉根を寄せた雪。

落ち込んでも無理はねェ。
川原の事を想って今までやって来た事が全部裏目に出ちまってたんだからな。
お前がどれだけ真剣だったか俺が一番よく知ってるよ。だが―――


俯く雪の背中をバシンと手形が残りそうなくらい思いっきり叩くとその衝撃で雪はエビ反りに体をしならせた直後、片膝をついて背中を丸めて座り込んでしまった。


「っ〜〜〜〜」


余りの痛みに唸る雪の頭を笑いながら掻き混ぜると、


「後悔してんじゃねェよ。今更手ぇ引くつもりか?」


「っ―――」


「中途半端に首ツッコんじまったんだ。なら、最後までちゃんと見届けてみせろよ。お前の気が済むまでちゃんと付き合ってやるから」


「っ――けど、これ以上優希に迷惑掛けたら……」


「今更迷惑も何もないだろうが。川原は偶然お前らのキスを見ちまったって言っていたがありゃ偶然じゃねぇ。必然だ。何故ならアイツは、お前に会うために体育館裏に行ったんだからな」


「っ優希が、俺に会いに?」


「あぁ、色々あって全部話したんだ。そしたらアイツ、お前に礼が言いたいって、そう言って慌てて体育館裏に行ったんだ」


「優希……」


「礼が言いたくてお前に会いに行ったのに、あんなトコを見ちまって逃げ出して。その後、お前に会えたってのに気持ちがグチャグチャで礼が言えなくて申し訳なくて泣いちまったっつってたぞ」


「っ――そうか、それであの時」


「泣かせちまったのなら次は笑顔にしてやりゃ良いじゃねぇか。今度は間違えない様に俺も付き合ってやっから」


「龍馬……」


雪は、俺の名を呟くと安心した様に笑みを見せた。
その雪の表情に思わず苦笑いを浮かべる。


「龍馬、やっぱお前っていい奴だよな」


嬉しそうにそう言った雪。だが俺は―――


「違げぇよ」


「いいや、いい奴だ」


「だから違う」


「照れんなって」


嬉しそうにからかってくる雪。
俺を理解ある親友として信じて疑っていない雪。
その姿に胸の痛みを覚えて思わず本音が漏れちまう。


「マジで違う。俺はお前が思ってる程いい奴なんかじゃねェ。ただ……したたかなだけだ」


……そう。俺は単にしたたかなだけだ。

確かに川原を幸せにしてやりたいと思っている。その気持ちに嘘偽りはねぇ。
だが、俺が考えてんのは、雪が想像してるような事ばかりじゃねェ。
雪に最後まで見届けさせて、あわよくば傷ついた雪の心の隙をつければとそんな事ばかり考えているような卑怯者だ。


「え……、龍馬?」


今だってそうだ。心の中ではギラギラと雪を欲しがってやまないのに、戸惑う雪に俺は何食わぬ顔で告げるんだ。


「雪。取り敢えず浅生に会ってみようぜ。そしたらなんか分かるはずだ」


理解ある親友のフリを続けながら、雪を恋の終焉へと導いて行く。

こんな卑怯な俺の胸の内を知ったらアイツはどう思うんだろうな。
また、俺の代わりに泣いてくれるんだろうか。
川原……。




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