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あの頃のままの君





体育館裏にいたユキは、四つん這いになって何かを探している様だった。


草をより分け、丁寧に丁寧に。


その姿が、四つ葉のクローバーを探した幼い頃を彷彿とさせる。


きっとあの時も君は、こうやって四つ葉のクローバーを探していたんだろうね。


膝が汚れるのも気にせず、必死で。


君はあの頃のままなのに、僕はいろんな意味で変わってしまったよ。


もう笑う事さえ出来ないし、心変わりまでしてしまった。


けど、絶対にそれを認めちゃいけない。


僕は、いつまで経っても君の王子様でいなきゃいけないんだから。


たとえユキが、他の誰かを選んだとしても、僕だけはいつまでも変わらず。


それが僕の望みであり、母への誓いだ。






植え込みに移動したユキにゆっくりと近づく。


そして、見下ろすように必死で何かを探すユキを見つけた。


君が探すのは、今も昔も変わらない。


ポケットからペンダントを取り出してシャラッとユキの頭上に差し出した。


「君が探しているのはこれかな?・・・ユキ。」


僕たちを繋ぐ四つ葉のクローバー。





驚くユキの、そっと差し出された掌に四つ葉のクローバーが加工されたペンダントを落とす。


すると、ユキはまるで宝物のようにペンダントを額に押し当て、目を瞑った。


それこそ大事そうに。


見つかった喜びを噛みしめる様に。


再び開いた掌に顔を綻ばせたユキ。


髪や眼鏡で表情がわかりづらかったけれど、体中から喜びが滲み出ていた。


その姿を見下ろしながらぽつりと呟く。



「君は、あの時もそうやって四つん這いで探していたんだろうね。」


「・・・えっ?」


僕に視線を上げてきた雪。



「きっとそうだと思うよ?あの時の僕の服がクローバーで青臭く汚れていたらしいから、きっと君もそうだったんだろうね。」


「……紫藤……先輩?」


確か宇野が言っていた。


お気に入りの服だったのに無くなってたから聞いたんだ。


そしたら、青臭く汚れていたので捨てましたって焦ったように言われたっけ、



「あの……?」


困ったように小首を傾げるユキを不思議に思って聞いてみる。


「・・・その四つ葉のクローバーのペンダントは?」


そしたら、返ってきたのは、


「あ・・・。これは、俺の大切な人との繋がりで、何よりも大切なものなんです。えっと・・・拾っててくださってありがとうございました。」


大切な人との繋がりという言葉と感謝の言葉だった。


その後ユキは、大切そうにペンダントを胸に押し当てていた。


それだけで十分だ。


これ以上もう、何も聞くことはない。


ユキが僕との繋がりを大切にしていてくれた。


それだけで、僕は……。


ゆっくりと体を屈め、手を伸ばす。


膝をついた瞬間、ユキが僕を見上げてきた。


その直後、ユキを抱きしめた。







「ユキ・・・。」


僕が探し求めてたのはユキで。


「ずっと、会いたかった・・・。」


ユキの方もずっと僕との繋がりを大切にしてくれていた。


―――それなのに


僕の想いは……。



「好きだ・・・。」


偽りの気持ちしか渡せない己の不実さに、ユキへの贖罪の意味を込めてそっと口づけを落としたのだった。





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