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選択肢は二つ




時間が経てば頭が冷えてくる。


冷静になると断片的にだけど色んな事が見えてきた。


母さんは今、別荘で静養している。


家には我が物顔で出入りしている女と叔父がいる。


宇野は、頼まれたとはいえ、勝手にあの女を母さんの部屋に入れていた。


そして、父さんはいない・・・。


仕事で忙しいんだろうけれど、父さんがあの綾原という人の事を知らないはずがない。


だってあの女の人が言ってたもん。もうすぐ僕の母親になる予定だって。


という事は、僕が入院している間にそんな話が進められてたって事だ。


そんな状態で母さんに別荘に行くよう手配をした父さん・・・。


母さんは今のこの家の状態を知っているんだろうか・・・。


そして、父さんは、母さんの事をどう思っているのか・・・。


考えれば考えるほど僕に残された選択肢がふたつしかないことに行きついた。


そしてその夜、僕は一睡もせずにベッドの中で一晩中考えた。


暗闇の中でも薄っすらと白く浮かび上がる天井を見つめながら瞬きを繰り返す。


大事な事なんだ。ちゃんと考えないと・・・。


別荘に一刻も早く行って母さんの看病をするか、それともここに残ってあの女と叔父さんと、そして父を監視するか・・・。


願いは、ひとつ。母さんに早く会いたい。


会って、看病してあげたい。僕がずっとして貰っていた様に・・・。


けれど・・・。


今、この家から僕が居なくなってしまったら母さんの帰ってくる場所が無くなってしまうような気がしてならない・・・。


別荘に行って母さんの看病をするのか、それとも母さんの居場所を守るのか・・・。


父さんも宇野も信用できない今、僕には味方が居ないんだ。


どちらか片方しか選べない。


殴られた痛みなんて一切感じられないほどジッと集中して考え続けた。




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