思い出
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どこまでも続くような緑と白の世界。
足を入れるのを躊躇ってしまうほど生い茂ったクローバー畑。
その風景だけは鮮明に覚えている。
きっと、あの場所が昔、彼女がよく話していた別荘の近くにあるクローバー畑なんだろう。
あの場所は、彼女の生まれ故郷であり、一番の遊び場だったっていつも幸せそうに話してたっけ。
そして、あの人と初めて出会った場所なんだと・・・。
そんな場所で、僕は彼と出会った・・・。
出会ったんだ・・・。
大丈夫。それだけは確かだ。
『どう――――?なんで――――』
『――――誰も――――ないんだ・・・』
どんな会話をしたのか、あまり良くは覚えていないんだけど、
それでも・・・
『じゃあ 僕が見つけてあげるよ』
僕が、見つけてあげると彼に言ったんだ。
そして、僕は色々探したんだと思う・・・。
どこをどう探したとかは分からないけれど、
でも・・・
『みーつけた!!』
そう言った僕に、泣きながら彼が抱きついてきたのを覚えている。
どんな顔だったとか、どんな声だったかは、全く覚えていないけれど、でも、僕の顔を見た瞬間、不安そうな顔が、一気に幸せそうな笑顔へと変わって・・・。
まるで、花が咲いたような彼の笑顔に、息も出来ないほど目が釘付けになったのを覚えている。
いや・・・覚えているっていうか、感覚として、胸に焼き付いているって言った方が正しいか・・・。
とにかく僕は、彼に運命を感じたんだ・・・。
『――――レイちゃん』
彼は、僕の事をレイちゃんって呼んでいて・・・
『じゃあユキ――――すごいきれいな――――』
僕は、彼の事をユキと呼んでいた・・・。
それから、僕たちは・・・
僕たちは、どうしたんだっけ・・・?
クローバー畑に行ったの、か?
いや、行ったはずだ。
そこから先は、全くと言っていいほど覚えていないけれど、でも、ユキに運命を感じたのなら、絶対にユキをあそこに連れて行ったはずだ。
あの人と彼女が四葉のクローバーを交換し合ったあの場所に・・・。
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