熱い視線
『・・・ずっと、大好きでした。』
『貴方が、大好きでした。』
『僕はもう、貴方の親衛隊長ではなくなってしまいましたが、貴方が好きな人と幸せになれるよう祈っています。』
眠ろうとして瞼を閉じるけれど、彼の穢れの無い澄んだ瞳に胸がざわついて寝付けない・・・。
もう何度目になるだろう、寝返りを繰り返しては、暗闇の中、瞳を閉じた。
真っ直ぐに、僕を見つめながら彼は、
『雪くんと、どうかお幸せに。』
『今まで、ありがとうございました。』
あんなに酷い事を言った僕を、嫌うでも、軽蔑するでもなく穢れの無い真っ直ぐな瞳で、決別の言葉を口にした・・・。
それでいい。
それが、僕が望んだ結末なんだ。
なのに・・・。
寝返りをうち、前髪を握り締める。
久しぶりに見た、彼の瞳は、磨きぬかれた黒曜石の様に綺麗で・・・綺麗で、綺麗で・・・。
いつも真摯に向けられていた視線が、走馬灯の様に色んな角度から蘇ってくる。
僕を慕う、真っ直ぐな視線。
熱い。
僕が傷つけた視線。
熱い・・・。
僕を切なそうに見つめる視線。
胸が・・・。
優しく包み込んでくれるような視線。
焼けてしまいそうなほど・・・。
・・・全部分かっていた・・・。
全て、痛いぐらいに感じていたんだ・・・。
視覚以外の感覚を全て研ぎ澄まして・・・。
彼の存在を、僕の身体全てが欲してたんだ・・・。
けど、心は・・・。
心だけは、ユキを求めていた・・・。
それは、愛情なのか・・・。
恋情なのか・・・。
義務なのか、試練なのか・・・。
もう、自分の気持ちすら分からなくなってしまっている。
けれど、僕は・・・
『二人は、いつまでも幸せに暮らしました。』
この結末を迎える為に、今まで生きてきたんだ・・・。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!