黒い瞳
『あの日から、彼の黒い瞳に僕が映る事はなくなってしまった・・・』
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むかしむかし、ある所に一人の大金持ちの男がいました
「・・・いました。」
ある日、その大金持ちの男は、大きなクローバー畑がある別荘に行きました
「・・・行きました。」
そこで、美しい娘に出会ったのです。
「・・・僕の場合は、男の子だったんだけどね。」
一目で恋に落ちた二人は、四葉のクローバーを互いに見つけて交換しました。
「・・・交換?・・・しました。」
このクローバーこそが、お互いの気持ちそのものなのだと。
「・・・気持ち?・・・わからない・・・。けど、交換したのならどうして僕は、それを持っていないんだろう・・・。枯れて、捨ててしまったのだろうか・・・。」
分からない・・・。
分からない事だらけで、無性に苛立つ。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
ただ、分かっている事といえば、この物語の結末は、酷く陳腐だったという事だけだ。
なぜなら、美しい娘は、大金持ちの男に酷い仕打ちを受けた上に、死んでしまったのだから・・・。
皆からは玉の輿に乗ったシンデレラみたいだって言われてたらしいけれど、なんてことはない。
彼女は、いつまで経っても灰被り姫のままだったんだ・・・。
・・・だから、僕は・・・彼女の骸(むくろ)を見下ろしながら、
『二人は、いつまでも幸せに暮らしました。』
彼女が、夢見た結末を必ず迎えると心に決めたんだ・・・。
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