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浅生(ノンちゃん)視点5



紫藤の後に付いて廊下を少し歩くと、大きなドアの前にたどり着いた。


ドアの上には第三会議室の文字。


なるほど、ここなら人は誰も来ないだろと一人納得しながら「どうぞ。」と紫藤が開けてくれているドアの中へと入って行った。


中に入り部屋を見渡すとそこには備え付けの机と椅子がだだっ広い部屋の中に所狭しとならんでいる。


僕達は、手近な椅子にお互い腰を下ろすとおもむろにに話し始めた。


「で?僕に何の用かな?親衛隊副隊長の浅生望君。」


さすがに自分の親衛隊の主要メンバーくらいは覚えているのか、確信を込めた言い方で僕の名前を言っていた。


「実は、その事についてお話があるんですぅ。」


「・・・何?」


「今日から僕、親衛隊の副隊長じゃなく、隊長に就任しましたのでその事についてのご報告です。」


「ふ〜ん。親衛隊幹部達の了承は取ったの?」


「もちろんです。」


「そう・・・なら僕からは何も言う事はないよ?それで良いんじゃない?用がそれだけなら僕はもう帰らせて貰うよ。」


 そう言うと、椅子から立ち上がった紫藤はゆっくりとドアへと向かって行った。


 僕は、紫藤を振り返る事なく、椅子に座ったままで足だけを組みかえると声を掛けた。


「・・・どうして川原隊長を辞めさせたんですかぁ?」


 紫藤の足音が止まる。


「噂のせいですかぁ?」


「・・・・・」


「あの子、何にも悪い事なんてしていなんですけどねぇ?」


「・・・・・」


 紫藤は、立ち止まったままで身動きすらしていないのか、何の音も聞こえてこない。


「嫌いだったんですかぁ?川原隊長の事・・・。」


「・・・・・」


「いっつも川原隊長の事だけ、無視していましたもんね?」


「・・・・・」


「皆には、いつも笑顔を振り撒いるのに不思議ですよね?」


「・・・・・」


「今でこそ副隊長親衛隊は穏健派で通っていますが、それは全て川原隊長のおかげだって事、ご存知じゃなかったんですかぁ?現に、紫藤副会長だって、親衛隊を信頼してくれてるじゃないですか。今の関係を築き上げたのも川原隊長なんですけどね?」


「・・・・・」


「なのに、どうして川原隊長に顔を背けてばかりなんですか?」


「・・・・・」


「もしかして、嫌いどころかドキドキして顔も見れないとか?」


「・・・・・」


茶化すように言ってみても全く反応を見せない紫藤に僕は、思い切って切り出す事にした。


「僕ね?実は、今回の星野への制裁騒ぎで用があって銀明先輩に会いに行ってきたんですよぉ。」


カサッ


初めて、紫藤から身動きした音が聞こえてきた。


けれど僕は気にせず、椅子に座って紫藤に背を向けたままで話しを続けた。


「そこで面白い話を聞いたんですよねぇ。僕が来るより先に銀明先輩に会いに来た人がいたらしいんですよ。しかも、その人は、川原隊長の濡れ衣を晴らす為なら何でもするって言ったんですって。」


「・・・・・」


「それって、ウチの川原隊長が無実だって分かっている人物だって事ですよね?しかも、何をさせられるか分からないあの銀明先輩に何でもするって言うくらいだもん。相当、川原隊長の事を大切に想ってるって事ですよねぇ?」


「・・・・・」


ここまで言っても殆ど反応を見せない紫藤に僕は、


「紫藤副会長。・・・僕より先に銀明に会いに行ったのって貴方じゃないんですか?」


そう言うと立ち上がり、紫藤に振り返った。



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