浅生(ノンちゃん)視点3
ノンちゃんSIDE
副会長親衛隊幹部から、隊長になる事を認めてもらった僕は、次の日、早速生徒会室を訪れた。
その目的は、もちろん紫藤に親衛隊長になった事の報告だ。
生徒会室に入るなんて事は畏れ多くて出来ないよぉ。・・・なんて思うはずもなく、
コンコン
「失礼しまぁす。紫藤副会長はいらっしゃいますかぁ?」
ワザと間延びした喋り方で、ノックと共にドアを開けた。
関係者以外云々(うんぬん)と書かれていたけれど無視だ無視。
開いたドアから、中を覗き込んでみると中に居たヤツラが、呆気に取られた様に僕を見ていた。
きっと、生徒会役員や顧問以外で入ってくる奴なんていないんだろうね?
それだけこの部屋が特別だって事だ。皆入りたくても入れない。
僕は、入りたいとも思わないけどね?
けど、今日は別。大事な用があるんだから。
・・・それにしてもコイツら贅沢してるな。
高級ソファに高級テーブル。照明にしろ、全てがアンティーク調に纏められているのは立花の趣味か?
それになんなの?この部屋の広さは一体・・・。
絢爛豪華な生徒会室を不躾にもキョロキョロと眺め回していると、立花と目が合った。
立花はここのボスなんだけど、僕達の味方なんだ。
だからもちろん今日、この時間に僕がここに来る事を事前に知っている。
ふふっ、予定どおり来てやったよという意味で、誰にも気づかれない様目配せした後、
「突然すみませぇん。2年S組浅生望でぇすっ!てへっ!」
と目を見つめながら言ってやると、ニヤリと笑った後、口パクで『キモイ』って言ってきた。
皆僕に注目しているからね?絶対に気づかれないと分かっての行為なんだろうけど・・・。
この野郎〜。この僕にキモイって言うなんて・・・。
今日の晩御飯、ユキちゃんに頼んで生姜をふんだんに使った料理にしてもらうからね!
アンタはカッコつけて、普通に食べてるつもりだろうけど、お茶で流し込んでるのがバレバレ何だよ。 あ、お茶も生姜湯にして貰おう。今健康ブームだし忙しい立花には良いとか何とか言ってさ。
どうせ、ユキちゃんにちゃんと食べるよう言ってる手前、苦手だとは言い出せないんだろうけど、ユキちゃんにも僕にもバレてるっての。
だから、あれ以来生姜は薬味としてしか使われなくなったでしょ?立花が好んで入れない限りは入れなくて良い様にしてくれてるんだ。
毎日一緒に食べてるから、ある程度の顔の変化は分かってくるようになってるんだよねぇ。
なんて事を考えていたら、
「きさまっ!生徒会室に何のようだっ!!」
呆気に取られた状態から真っ先に立ち直った日向が声を掛けてきた。
あ〜、うるさいうるさい。
何のようだって、僕、一番初めに言ったよね?紫藤副会長はいらっしゃいますかって。
せっかく出血大サービスで可愛い声を出してやったってのに、聞いてなかったの?
全くもうっ!仕方ない。もう一回言ってあげるよ。
「あれ?耳が遠いのかなぁ?紫藤副会長に用があるんですっ!!」
いつもの三割増声を張り上げて日向に答えた。
「なっっ!!」
そう言った後、日向は顔を真っ赤にして色々僕に文句を言ってきたけれど、全て無視してやった。
はいはい。アンタの相手は後で幾らでもしてあげるから、ちょっと待っててね?
せっかちさんは嫌いだよ?
今、用があるのは残念ながら紫藤なんだ。アンタじゃない。
日向を完全無視しながら、紫藤に近付くと、
「紫藤さまぁ。お話があるんですが、いいですかぁ?」
「いいけど、何?」
おぉ、麗しの王子スマイル!胡散臭い事この上なしっ!
「う〜ん。ここじゃ騒がしいので、移動して貰ってもいいですかぁ?」
あんまり人には聞かれたくないもんでね。
僕がそう聞くと、紫藤は困ったような笑顔を浮かべると大量の書類を指差してから、
「悪いけど、ここでしてくれる?仕事しなくちゃいけないから。」
そう言うと、僕の返事も聞かずにペンを走らせ始めた。
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