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容赦の無い叱責





 顔を赤らめて困っていると、副会長席に座り、書類を手にしているあの方の姿が視界に入った・・・。


 ドキンッ


 胸が高鳴ると同時に、すぐに視線を逸らせた。
 

 あの方は僕を嫌っていらっしゃるんだ・・・。


 もう、見つめる事さえ許されない・・・。


 さっきの胸の高鳴りも、会えた事の嬉しさよりも拒絶される事への恐怖が多くを占めている・・・。


 息苦しい…。


 あの方と同じ空間にいると思うだけで胸が張り裂けそうに感じた…。


 けれど、一瞬だけ見えたお姿は相変わらずお美しくて瞼に焼く付いて離れない・・・。


 何で今更・・・。


 あの方の事はもう、諦めたはずじゃないかと残像をかき消すように瞬きを繰り返した。


 すると・・・。


「何だ、騒々しいっ!!」


 ビクンッ・・・。


 まるで雷が落ちたような一喝に、肩が跳ね上がった。


 この声は・・・。


「上ノ山っ!!お前達は仕事もせず・・・・・何故お前がここにいる・・・。」


 上ノ山兄弟を叱責した後に続いた言葉は、静かだったけれど、明らかな怒りと嫌悪が感じられた。


 あ・・・日向・・・先輩・・・。


「こんな所にまでのこのこ遣って来おってっ!!紫藤の次は立花かっ!!汚らわしい性根の腐った奴よっ!!」


 容赦のない叱責にガタガタと体が震えるも、ここまで来てるんだ、逃げるわけにはいかないと顔を上げた。


「あ、あの僕h「黙れっ!!貴様の話など聞く耳もたん!!さっさと消え失せろっ!!」」


 勇気を振り絞って出した言葉も、日向先輩の怒鳴り声によってかき消されてしまった。


 恐い・・・体中がブルブル震えてくる・・・。きっと顔色も最悪な事になっているだろう。


 だけど、頑張ると決めたんだ。


 ここから一歩も動くつもりはなかった。


 歯を食いしばり、俯き耐えていると、ズンズンと大またで僕に近付いてくる足音が聞こえてきた。

 
 どうしよう・・・追い出される・・・。


 身を硬くして、身構えた瞬間、


「日向ってめぇ・・・優希に大声上げてんじゃねぇっ!!」


 聞きなれた怒鳴り声が聞こえて来た。


 あ・・・。


 そして、会長室のドアから現れたのは・・・。


「立花さんっ!!」


 鋭い目つきで日向先輩を睨みつけている立花さんだった。


 良かった・・・。


 安心できる姿に思わず走り寄った僕は、縋るように立花さんの制服を掴んだ。


「悪ぃ。急な仕事が出来てな。恐かったろ?」


 僕の頭を撫でながら優しい瞳で気遣ってくれる立花さんに心配掛けない様、フルフルと首を横に振った。


 けれど、制服越しに僕の震えが伝わってしまったのか、ガシリと僕の頭を掴むと胸の中に包み込んでくれた。


「もう大丈夫だ。後は俺に任せろ。」


 その言葉に小さく頷くと、安堵のため息を漏らした。


 良かった・・・立花さん・・・。


 

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