本当にいいの?
「あ〜、今回の事では立花の事、ホントに見直したね。」
「あぁ?」
「まさかセフレたちを全部切っちゃうとは思わなかったよ!」
「フッ、そっちの方がリアリティがあってよかっただろ?」
「うんうん!今回の事は銀明も衝撃を受けてるんじゃないかな?それに星野への強姦未遂の噂なんて微塵も聞こえてこないしね!!流石は腐っても生徒会長っ!星野の事なんかよりアンタの本命の方がみんな関心があるみたいだ。」
「ま、狙いどおりってトコだな。」
「ふふっ、うん!後は、頃合を見計らってユキちゃんが会長補佐になるんだったよね!僕は、副会長親衛隊の皆に隊長になる事を承認して貰う事が先決かな?」
「・・・うん。そうだね。」
二人の会話に相槌を打ちながら呟いた。
始めてきたあの日からの立花さんの行動は早かった。
次の日には性的対象としていたすべての人との関係を断ち切り、あたかも本命が現れたように立ち振る舞ってくれた。
そして、僕の部屋に通うのをワザとひと気の多い時間帯にしてくれたりと余念が無かった。
・・・何もかもが立花さんの狙いどおりに進んでいる。
だけど・・・。
その全てが僕の為だと分かっているのに、なんだか胸が痛い・・・。
本気で立花さんを想っている人に申し訳ない・・・。そういう気持ちが僕の心に重く圧し掛かっていた。
体だけの関係なんて良くないとか、そんなことは分かっている。けれど、体だけでも繋がっていたいと思う気持ちも分かるんだ・・・。たとえそれが自分を傷つけ、泥沼に陥ってしまうと分かっていても、それでも止められないのは温もりが欲しいから・・・。
僕が、あの薔薇園で立花さんに身を預けた時のように・・・。
気が付けば箸が止まっていた。それを不審に思ったのだろう、ノンちゃんが声を掛けてきた。
「ユキちゃん?どうかしたの?」
「・・・えっ?あっ、ううん。なんでもない。」
そう言って俯くと、今度は立花さんが箸を置いた。
「・・・大方、俺の親衛隊の事でも考えてたんだろう?」
「・・・え?」
図星を突かれて思わずピクリと体が反応する。
「だが、それはお前が考える事じゃねぇ。全ては俺が仕出かして来た事であり、俺が本気にならねぇと分かっていながらあの部屋に通ってきたあいつらの問題だ。罪があるとすればお前じゃねぇ。罪を背負うべきは、俺であり、アイツらなんだ。」
「立花さん・・・。」
「だからお前は、何も気にせずやれる事をやればいい。」
「ふぅ、・・・そうですね。」
この人はいつもそうだ。
苦しい時、迷った時にはいつも背中を押してくれる。
色んなことを考えすぎてすぐ八方塞に陥る僕の目の前にいつの間にか道を切り開いてくれているんだ。
そして、僕を守っていてくれるんだ。己の身を盾にして・・・。
僕も強くなろう・・・。事態はもう、動き出しているんだ。
誰も傷つけずに済むなんて事はありえないんだから。
そして、それを罪だと思うのなら、それを背負って生きていこう。
もう、逃げないと決めたんだ。
真っ直ぐ前を向いて、傷つく事も傷つける事も恐れずに・・・。
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