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思い出




 パパなんて、きらい!


 やっと、休みが出来たからって初めて、家族みんなで別荘に来たのに、仕事が入ったって、帰っちゃった父さん・・・。


 そんなに、お仕事好きなのかな?


 僕より、好きなのかなぁ?


 ねぇ、僕がいなくなったら心配してくれる?


 いなくなったことに気づいてくれる?





 そうして始まった、一人ぼっちのかくれんぼ。


 愚かな僕は、父さんの僕への愛情を確かめるために、別荘を抜け出した。




 お願い・・・



 誰か見つけて?



 待ってるんだ、僕・・・



 誰かが見つけてくれるのを・・・



 こわいよ



 誰か



 早く見つけて?





 
 けど、誰も探しに来てくれなくて・・・。


 僕なんて もう いらないのかな?
 
 
 そう思った僕は、怖くて、不安で、ずっと泣いていたんだ。





 しばらく泣いていると、いつの間に来ていたのか、突然男の子の声が、近くで聞こえた。




「どうしたの?なんで泣いてるの?」


「かくれんぼしてたんだけど、誰も見つけてくれないんだ・・・」


「誰も?」


「誰も・・・きっと僕がいなくなったことだって、みんな知らなんだ」


「そんなこと・・・」


「ううん きっとそうだよ きっと僕は誰にも見つけてもらえないんだ・・・ 僕はいらない子なのかな?」


「じゃあ 僕が見つけてあげるよ」


「・・・え?」


「いいから 早く逃げて?10数えるよ?はい いーち にーい・・・」


「わっ!ちょっと待って! 早くかくれなきゃ!」





 たった一人のかくれんぼは、あの人のおかげで楽しい楽しいかくれんぼへと一気に変わった。





 はぁはぁはぁはぁはぁ


 よし!ここなら見つからないよね


 林の中を駆け回って、腰を下ろした大きな木の幹。


 どきどきどきどき


 息を殺して待っていた。


 唯々、待っていた・・・。





 まだ こないのかな?


 どこ 探しているのかな?


 帰えっちゃった・・・とか ないよね・・・


 段々不安になってきていた





 その時、




「みーつけた!!」


 そう言って、この陰に隠れていた僕を見ていたあの方の表情は逆光で見えなかったけど、


 すごく安心したのを覚えている。


 何も知らなかった幼い僕は、本当に嬉しくて、あの方に抱きついて声を上げて泣いた・・・




 将来、どれだけ遠い存在になるかも知らずに・・・。




 彼は笑って僕の頭を撫でながら


「ねぇ 名前教えて?僕は美怜<みれい>っていうんだ」


「レイ・・・ちゃん?」


「ふふっ ちょっと違うけど・・・ レイちゃんでいいよ?」


「うん!ぼくは優希<ゆうき>っていうんだ」


「ゆうき?」


「うん!」


「優希<ゆうき>っていう名前もいいけど、でも、白雪みたいに真っ白だから、ユキってよぶね?」


「ユキ?ふふっ うん!!」


「じゃあ ユキ あっちにいこ?すごいきれいなところがあるんだ!」


「きれいなところ?」


「うん!クローバーがいっぱいあるんだよ?すごくきれいなんだ!ユキには特別に見せてあげるよ」


「っ!?あ、ありがとう!」


 特別っていう言葉が嬉しくて、あの方と手を繋いで駆けていった。





 そして、あのクローバー畑についた・・・。





 めったに来ない別荘で出会った二人は、幼いながらにもう逢えないことを気づいていた・・・。


 だから、せめてもの思い出にと、四葉のクローバーを探した・・・。





 あの後、やっと探しに来た母さんに痛いほど抱きしめられた。痛くて苦しかったけど、僕は大人しくしていた。なぜなら、母さんは泣いていたから・・・


 あの日、あなたからの贈り物は四葉のクローバーだけじゃなかったんだ・・・


 あの頃の僕が、欲しくて堪らなかった物も一緒に僕の手のひらに残して行ってくれた・・・。


 愛情をという名の贈り物を・・・






 だから、貴方のためならどんなことでもします。



 貴方をどんなことからもお守りします。



 そのために、親衛隊に入ったのですから・・・。



 貴方の幸せを祈っています。



 遠くから祈っています。



 けれど、



 願わくば、



 あの頃のように、



 ・・・貴方に見つけてもらいたい





 僕は、貴方との再会に運命を感じてしまったのだから・・・




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