さよなら
<ユキ、ごめんね?遅くなって。>
再び脳裏に浮かんだ言葉は、僕への言葉じゃなくて・・・。
<・・・さあ?そうだっけ?僕、興味ないから。>
やっと頂けた言葉は・・・酷く、冷たいものばかりで・・・。
<・・・最低だね。>
決して、あの方の瞳に僕が映る事は無くて・・・。
<君みたいな子に、親衛隊長なんてして貰いたくないな。>
拒絶ばかりだった・・・。
<みーつけた!!>
幼い頃、そう言って僕を見つけて下さったあの方は・・・。
もう、思い出の中でしか存在しないのだと、嫌というほど思い知らされた。
だって・・・現実のあの方は・・・。
<好きだ・・・。>
もう別の人を見つけてしまったのだから・・・。
シャラシャラ
シャラ・・・
朧(おぼろ)げな闇の中で、音に導かれるように再び現実へと舞い戻ってきた僕が目にしたのは、あの思い出のペンダントだった・・・。
いつの間に外されたのか、四葉のクローバーのペンダントは立花さんが、手にしていた。
「四葉の、クローバーか・・・。」
立花さんはそう言うと、悲しげにペンダントを見つめていた。
立花さんが、手首を動かすたび、僕のペンダントは角度を変えてキラキラと光を反射させている。
その光を映した立花さんの瞳も、キラキラ光っていた。
「・・・か・・・いで・・・。」
「あ?」
「なか、ないで・・・。」
「っ!!」
何故かこの時、立花さんが泣いているような気がした。
決して涙をながしている訳じゃないのに・・・。
決して嗚咽が聞こえるわけじゃないのに・・・。
何故だろう・・・。
彼が、泣き叫んでいるような気がした・・・。
「はぁ?何言ってんだ。お前・・・。泣いてんのは、お前だろ?」
立花さんは、バカにしたように笑っていたけれど、
「・・・そのペンダント。立花さんに、あげる・・・。僕にはもう・・・必要ないものだから・・・。」
「何言って・・。」
「ふふっ四葉のクローバーってね?・・・幸せを運んできてくれるんだって・・・。だから・・・立花さんに、あげる。」
「お前・・・。」
「・・・幸せに・・・なって。」
悲しそうな立花さんには、幸せになってもらいたい・・・。
せめて、僕なんかよりずっと・・・。
僕が、笑ってそう言った瞬間、
立花さんは、切羽詰ったように僕に覆いかぶさり、貪(むさぼ)るようにキスをしてきた。
角度を変え、何度も何度も・・・。
僕は、目を閉じて、立花さんのキスを受け入れた。
だって・・・キスする瞬間の顔が、凄く辛そうで・・・。
本当に、泣いてしまいそうで・・・。
そして、僕は、
「さよなら・・・レイちゃん・・・。」
キスの合間を縫うように、小さく別れの言葉を口にしたのだった・・・。
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