こんな時でさえ 「こやつが自分で認めたのだ。あんなに醜いことをしておいて、泣いて心優しい雪に縋(すが)ろうなどと、全く、腐った奴よ。」 「何言ってるんだっ!!優希は唯、謝っていただけだっ!」 「理由もなく、謝るはずが無かろう。そういう事なのだ。雪。」 「そういう事ってどういう事だよっ!!」 日向先輩は、雪くんを一瞥すると、その言葉を無視してあの方に向き直った。 「早速、立花に報告せねばな。・・・紫藤。」 「・・・何?」 「お前の親衛隊長であろう。何か言いたい事は無いのか。」 「・・・・・」 日向先輩が、まるで僕を汚いもののような目で見た来た。 けれど、日向先輩は、恐ろしく無かった・・・。 唯、僕は、あの方に迷惑を掛けてしまうのが・・・不安で・・・恐くて・・・。 「・・・最低だね。」 ビクンッ あの方は、顔を背けたまま・・・ 「君みたいな子に、親衛隊長なんてして貰いたくないな。」 一度も、僕の方を見ようとはせず、不快そうに眉間にシワを寄せながら、そう、言い放った・・・。 「っっ!?紫藤っ!?お前何言ってんだっ!!」 雪くんの怒鳴り声に反応して、 「っ!?優希っ!?」 僕は立ち上がり、走り出した。 「優希っ!!待って、優希っ!!」 雪くんが追いかけてくれた気配がしたけれど、 「っ!!離せっ!日向っ!!」 「落ち着けっ!!雪っ!!」 「離せって言ってんだろうがっ!!」 日向先輩に取り押さえられたみたいだった。 だけど、僕は、そんなことは気にもせず、走り続けた。 さっき上ったばかりの階段を駆け下り、転びそうになりながらも走り続けた・・・。 <・・・最低だね。> あの方の僕を攻める言葉よりも、 <君みたいな子に、親衛隊長なんてして貰いたくないな。> あの方に突き放された言葉よりも・・・。 こんな時でさえ僕を見てくれない事が悲しくて・・・。 こんな時でさえあの方の横顔しか見れないのが苦しくて・・・。 僕は、溢れ出る涙も気にせず、走り続けた・・・。 [*前へ][次へ#] [戻る] |