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再び優希


 
 ここは・・・?


 あれから、何処をどう走ってきたのか・・・。


 どれくらいの時間ここに居るのか・・・。


 気が付けば、薔薇が生い茂っている温室の中に立ち尽くしていた。


 この温室は薔薇園になっている様で、いろんな種類の色とりどりの薔薇が、品良く植えられていた。


 さっきまで灰色にしか見えなかった世界が、急に色付いたみたい。


 始めて見る温室と薔薇の香りに引かれ、虚ろになりながらも薔薇へと近付いた。


 そして引き寄せられるように、見事に咲いている一輪の薔薇の花びらに触れてみる。


 まるで高級なベルベットの様な手触りに、思わず感嘆のため息を漏らした。


 綺麗・・・。


 何で今まで気が付かなかったんだろう。


 こんなにステキな場所なのに・・・。


 薔薇を傷つけてしまわないよう、ゆっくりと手を離して、再び歩き出した。


 薔薇の香りに包まれ、気分が少しだけ落ち着いてきたのか、さっきまで完全に停止していた思考が再び蘇ってきた。


 ・・・・・


 ・・・・・


 あの方は、やっぱり雪くんがお好きだったんだ。


 それは、もう、どれだけ自分を誤魔化そうとしても揺るぎない真実だ。


 なぜなら、僕は、自分の耳でその言葉を聴いて、この目でお二人の口付けを見てしまったのだから・・・。


 お似合いな二人・・・。


 あの時思ったように、白雪のような雪くんこそが、あの方に相応しいのかも知れない。


 昔、かくれんぼしただけの僕なんかよりずっと・・・。





 小さい頃の大切な思い出・・・。


 だけど、それは、僕にとっての大切な思い出でしかなかったんだ。


 それが今日、嫌というほど思い知らされた。


 ふふっ、普通に考えれば分かる事なのにね。


 子供の頃に、一回だけかくれんぼした時の事を、覚えていて下さるかもしれないだなんて、夢のまた夢なんだ。


 ・・・しかも、運命の相手だなんて・・・。


 バカみたい・・・。


 そんな小さな思い出にしがみ付いて、あの方に見つけて貰いたいだなんて・・・。


 本当に、バカみたい・・・。





 だけど・・・。


 だけど、


 信じて待ってたんだ・・・。


 バカみたいだけど、本気で・・・信じてたんだ・・・。




 

 

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