幸せは自分で掴むもの 1 「本日もよろしくお願いします」 「「「お願いします!!!」」」 合気道の道場の一日は、礼で始まり、礼に終わる。 僕は、いつものとおり準備体操を終え、畳の端に正座して指名されるのを待つ。 今日は誰と組めるのかな? ここの道場は子供も多いけど、大人の人の方が断然多い。学生時代からずっと続けている人もいれば、自分の子供が始めたのをきっかけに、合気道に魅せられてやり始める人も少なくない。 確かに合気道は綺麗でかっこいい。 僕も魅せられた内の一人だから。 「倉橋!」 指名された僕は、畳の中央に移動し、相手を待つ。 「岩谷!」 相手も僕と同じように移動してきて、 「礼!」 「「お願いします」」 正座をし、両手を畳みにつけて、頭を互いに下げる。 やった!今日の相手は文さんだ! 文さんは、岩谷文といって、小学校一年生から合気道を続けているウチの道場自慢の門下生だ。先生たちからの信頼も厚く、指導する側に回るのも珍しくない。 僕たちはすばやく立ちあがり、早速始める。まずは僕が受け(技を受ける方)で文さんが取り(技を掛ける方)だ。 僕からの攻めを難なく受け止めた文さんは、全く無駄の無い動きで、技を仕掛けてくる。それはすごく綺麗で舞を連想させるほどだ。僕は文さんの技を受けてクルリと受身を取る。 そして、すばやく立ち上がり、次の攻めに入る。 僕は文さんの顔めがけて、思いっきり正拳突きを繰り出すと文さんは、すばやく体をずらし、手套で難なく受け止め、技を仕掛けてくる。堪えきれなくなった僕は、後ろに倒れながら受身をバンッと取る。 そして、すばやく立ち上がろうとしたところで 「止め!」 「「ありがとうございました!」」 [次へ#] [戻る] |