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幸せは自分で掴むもの
2
 竜一SIDE




 佑はバカだ。いや、成績は良い。けどバカだ。



 放課後、帰ろうと立ち上がったら、聞きなれた声に呼び止められた。



 いつもは腑抜けた顔でバカなことばかり言っているあいつが、真面目な顔で聞きたいことがあると言ってきた。



 今まで見たことのない真剣な眼差しに驚きつつも「なんだ?」と答えてみる。



 よほど重要なことなのだろう。俺の目を見つめる瞳は緊張のためか少し潤んでいた。



 一瞬かわいいと思ってしまったこは胸にしまっておく。



  仕方ない。今回は不可抗力だ。



 あんな潤んだ目で縋るように見つめられたら誰だってそう思うだろう。たぶん、女だったら即、押し倒している。







 いや、女じゃなくても・・・
   





 ハッと自分の危険な思考に気づいて軽く頭を振る。



 クソッ、ありえねぇ・・・何考えてるんだ、俺。



 けど、なんでだ?



 今まで女の事でかわいいと思って押し倒したことなんてない。唯、性欲の赴くままに従っていただけで、要は性欲処理さえできればよかった。



 女の方だって俺が本気にならないことをわかっているからなんだろう、揉める事もない。揉めたら、最後だから。



 深く考えるのは止そうとゆっくりと息を吐きながら目にかかった前髪を掻き揚げた。


 
 すると、いつの間にか、そばに来ていた佑に俺は腕をガシッと抱え込まれてしまった。



 今まで考えていたことがなんだか疚しく思えて



「ちょっ、おまっ、離せ!」



 慌てて佑から腕を引き離そうとした。



 が、思った以上に力が強くて引き剥がせない。



 焦って暴れていると更にギュっと腕にしがみつかれてますます離れなくなってしまった。助けを求めようとすばやく辺りを見回してみたが、残っているのは俺と佑だけだった。



 焦れば焦る程、意識しちまう!






 ドキンッ







 ドキンッ






 煩ぇっ!心臓!





 ドキンッ






 ドキンッ






 静まれ!静まってくれ!頼むから!!






 ドキンッ






 ドキンッ






 落ち着け、俺!腕にしがみついているやつの顔を見てみろ!ただのバカだ!



 バカが一匹引っ付いているだけだ!





 ドキンッ






 ドキンッ






 ちらっ











 ドッキーーーーーン!!!!!!








 俺を縋るように見上げている佑は自然とうわ目使いになっていて・・・




 潤んで不安げに揺れている瞳に。






 少しだけ開いている艶のある柔らそうな唇に。






 釘づけになった・・・。


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