幸せは自分で掴むもの 10 結局その日のお弁当は食べる気になれず、全部竜ちゃんにあげた。 『残しちゃったら母さんが悲しむから全部食べてね?』という言葉と一緒に。 当の竜ちゃんはと言うと、『これ全部っ!?』と目を見開いた後、ヤケクソとばかりに僕の分のお弁当もかき込んでいた。 ちょっと!ちょっと!!せっかく母さんが作ってくれたお弁当なんだから味わって食べてよね!って文句を言ってやろうとしたけれど、そのお弁当を残した僕には何も言う権利はなくて、ただジッとフードファイター竜一を眺めていたのだった。 ぐるるる〜 きゅるるる〜 「倉橋、静かにしなさい」 午後の授業、お腹の音で先生に怒られた・・・。 周りからクスクス笑いが聞こえてくる。 確かに僕のお腹からは尋常じゃないくらい大きさで空腹を知らせる音色が奏でられていた。 その音は、両手でお腹を押さえても、紫色の食べ物を思い出しても、息を止めても鳴り止む事はなくて、僕を困らせ続けている。 クソッ、こんな事ならもっとお弁当食べとくんだった。 お腹も僕同様、シリアスには向かないみたい。 お腹を擦りながら、ため息を付いた。 はぁ・・・それにしても竜ちゃん、誰と電話してたのかな? 会いたいって一体誰と・・・? ちょっとだけ美伊那ちゃんが言ってた意味が分かったような気がするなと、この前の出来事を思い返してみる。 それは竜ちゃんと付き合った数日後の事。こっそり出かけた白薔薇での出来事だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |