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†ロイエド*奥の間†
『移動遊園地』…『膝枕』の次の日、遊園地に行く二人のお話。

**************

「はぁ…。移動遊園地ってゆうわりには…しっかりしてんのなぁ」

エドワードが観覧車やら高い棒にくくられた何本もの太い縄の先ででぐるぐ回る椅子に乗って騒いでいる子供たちを眺めた。

「そうだな。何か見たいものは?」

自分を置いていきそうな勢いで歩き回るエドワードの後ろで、マスタングが笑う。

どうだろう、この嬉しそうなエドワードは。

ちらしを見せたときは特別興味を示さずに握りつぶしてしまったというのに、木馬が上下しながら回るのを一緒に頭を動かしながら見ている。


普段、旅の先でいろいろと珍しいものを見ているはずなのに、こういった子供の楽しむものは結局視線の端に映るだけなのかもしれない。
それに見入る時間など、いつだってあるわけがない。

「…」

そうさせているのには自分にも一因があるから、マスタングは申し訳ない気持ちと、素直に声を上げて喜ぶエドワードをいとおしく思う気持ちとで少し切ない気分だった。

「大佐、あれ何だ?」
「お」

小さな小屋をみつけ、エドワードが振り返る。

「…びっくり、箱?」

時折、ガッタン、という大きな音とともに、悲鳴やら歓声やらが聞こえるそれは、エドワードの興味をたぶんに引いたらしい。

「ああ、あれは…」
「行ってみようぜ!」

単に中が動いて周りがぐるぐる回って、気持ち悪くなる…という嫌な記憶を思い出したマスタングがくるっと横を向く前に、エドワードはマスタングの腕を掴んで走り出した。

「は、鋼の!待て!あれはものすごく単純な作りで、そんなに面白いものじゃ…!」
「いーだろが!俺が見たいもん見ていいって言ったじゃねーか、よ!」

ぐいーっと引っ張られ、マスタングも後ろに体重をかけてそれを引き止める。

いたいけな子供のころにすり込まれた暗い記憶というものは、大人になるとなおさら大きなトラウマになる。
女性とのデートでも必ずそちらを見せないようにしてきた代物に、誰が好き好んでエドワードと入ろうか。
顔を青くしただけで後々までネタにされる、絶対。
それを盾に取られたらできるものもできなくなるかもしれない。

「エドワード!」
「おわぁ!」

男の子だと言っても相手が大人では、必死で引っ張られたらこの場に浮き足立っているエドワードはつんのめるようにマスタングの所まで戻される。

「んだよー」

肩で息をして安堵するマスタングの手を振り払う。
いきなり綱引きをさせられ、挙句に負けてしまったエドワードが思い切り不満な顔をして腕を組んだ。
とりあえず知らないものだから、入ってみたかったのだ。

単純なものでもいい。

「遊びに来たんだろぉ?だったらくだんないもんでもいいじゃんか。…二人で入るんだから」

ふんっとそっぽを向くエドワードに、心底嫌な顔をしていたマスタングが困りが顔に変わる。

そんなかわいいことを言ってくれるな。

小屋はどう見てもせいぜい4人くらいが入れる大きさだ。
どうせ向かい合って座り、どっちかがガッタンと下がって、壁がぐるぐるだ。
絶対、気持ち悪くなる。
さっき食べたものが胃の中ですでに拒否反応を見せる。

「…観覧車でもいいだろう?」
「いやだね」

即答されてマスタングがぐっと眉をしかめて頼むから、という顔をする。
向かい合って座って、揺れるならその方がまだましだ。

「あれがいいんだっつってんだろ」

びしっと指を差され、マスタングは手で顔を覆う。その隙間からエドワードの様子をうかがうと、むきになりながらもあの小屋に対する期待を浮かばせて出入りする人の流れを見ていた。
カップルとか親子とか、女の子が占める割合が高いから、どちらかといったらエドワードが好むとは思えないのに。
ホッとした顔で出てくる人や、大笑いしながら出でくる人たちが楽しそうで、それが彼の気を引いたらしい。

「…言っておくが、君向きじゃないぞ?」
「だーかーらーよぉ…。何だよ、大佐あれ苦手なのか?」

まだ折れてくれないマスタングに、さすがのエドワードも不審を抱く。
文句言いながらも引き摺られて行ってくれてもいいはずなのに、こんなにも抵抗されると、エドワードにはうずうずと悪戯心がわいてくる。

「いや、別に」

ふう、と軽くかわそうとするマスタングの顔に、エドワードは確信をもってにやり、と表情を変えた。

「なぁなあ、入ろ?な?お願い」
「―っ」

凶悪。

マスタングにはその一言が頭に浮かんだ。
エドワードが軽く眉を八の字にしてマスタングの両手を掴む。

「…う」

ゆさゆさとそれを振る姿に不覚にもマスタングが身を引いて頭に上る血を必死で見せないようにするのを、知っているかのようにエドワードが引っ張る。

「たーいーさー」
「〜〜〜〜〜〜君は」

確信犯なのは百も承知。
誰がこんな状況じゃなきゃこんなこっぱずかしいことするかよ。
14も離れた男同士が恋人に見えるわけがないだろーが。

親戚の子供でも連れて歩いているようにしか見えないだろうからこそ、エドワードは子どもを装ってマスタングを罠にかけようとする。

その罠に見事はまるだろう相手の恋愛心を利用したって、これだけ嫌がるマスタングをあの箱に入れてみたいのだ。
エドワードはあげ足を取れるときはここぞと嬉しそうな顔で思い切りマスタングを揺さぶるのだ。

「な?」
「…あとで返すぞ、この借り。それでもいいのか?」
「はぁ?聞っこえねー??」

く、と奥歯を噛んだマスタングの脅しをまったく聞く耳持たずにエドワードはその言葉を承諾と見てマスタングを引っ張って歩き出した。

「…まったく」

それでもその後姿がうきうきとして、みつ編みが揺れているのを見て、マスタングはあきらめてため息をつく。
今日はジャケットだけでも十分楽しめるくらいの陽気で、それがエドワードの機嫌をなおさら良くしている。
まあ、それに付き合うのも悪くない。






********


「お二人ですか?」
「あ、ああ」

扉の前の女性ににっこりと問われて、エドワードがちらっとマスタングを見た。
他にも後ろに並んでいるのだが、見知らぬ人と入るのはどうなんだろうと少しは考えた。

『二人で入るんだから』

そう言った手前、二人で入るほかない。それで承諾させたのだし。

「二人だ」

もう子どもに振り回されている気分なマスタングはちゅうちょしていたエドワードの背を押してその小さな扉をくぐらせた。
エドワードがかがむほど小さな扉をくぐると、意外と中は狭い。
たぶん、両腕を広げられないんじゃないかとエドワードは相向かいに設置されている椅子の片方に腰掛け、その椅子がそのまま壁へと続くのを見上げて狭さを実感する。

「狭いな…」
「あー…、う、ん、そうだな」

マスタングの声に顔を戻したエドワードが、その小さい扉をくぐるマスタングの腕が触れそうになって少し身を引いた。

狭い。

向かい合って座ればマスタングは背を少し丸める感じで、足の先が当たる。エドワードの座る席に足を乗せられそうな近さ。

「では、閉めますから、お楽しみください」

再び笑顔で女性が声をかけると、パッタン、と扉が閉まる。

「動くんだろ?これ」
「ああ」

エドワードが楽しそうに両壁に手をついて天井を見上げるのを、マスタングは少し苦々しい顔で見やる。
描かれているのはオレンジやら黄色やら赤やらの華やかな色の家具。それが宙を舞うように一面に広がり、足元も天井もわからない。

「ふふ〜ん」
「嫌な顔をするな」

足をエドワードの座るほうへつっかえにして踏ん張るマスタングに、エドワードはにんまりと笑う。

「だってさー、おわっ」
「う…っっ」

ガッタン

浮かれた音楽が流れている中で、いきなり部屋が大きな音をたててエドワードのほうへ傾いた。
その衝撃に、エドワードが頭を軽く打って声を上げて笑う。

「お!壁が回るぜ!」
「〜〜〜〜っっ」

お約束ごとではあるが、両サイドの壁がぐるん、と動き出した。嬉しそうなエドワードの声がマスタングの余裕を奪う。

こんな子供だましで。

エドワードのほうに傾いた小屋の壁は、それを助長するかのようにぐるぐると勢いをましていく。足を突っ張って、エドワードのほうへ倒れないようにしているマスタングの表情に、エドワードが腹を抱える。

「なに、大佐こんなん、駄目なのかよ!」
「失敬だな…!くだらなすぎて目が回るんだ!」

ガッタン

両足を浮かしているエドワードが次の衝撃に飛び上がった。

「うわっっ」
「―!」

一瞬の間もないくらいで今度はマスタングのほうへと小屋がいきなり傾く。
手動で動かすものの荒っぽさは例えようがない。

「いったい!」

頭を今度は天井に打ちつけたエドワードが、それでもこの馬鹿らしさに笑い続ける。

「…ああ、もういいかげん」

やめてくれ、とマスタングが顔を覆って視界をさえぎったとたん。
傾きが中途半端だったのか、動かす人間の加減か、またマスタングのほうへ傾く。

「んぎゃ!」
「…う!!」

動きに身を任せていたエドワードがその動きに逆らえずに体ごとマスタングにタックルしてしまう。

「って〜」
「〜〜〜」

ほとんど真横になったような状態で、エドワードがマスタングの肩にぶつけた額にくらくらしながら体を起こそうとして、マスタングに素早く両腕を回される。

「な、何すんだよ!」
「いや、ちょうどいいなと思って」

両足を開いて踏ん張っていたマスタングの体にはからずも飛び込む形になって、エドワードは上半身を起こして下になったマスタングをにらむ。

「は、放せってば!」
「離れられるならな?離れてごらん」

ふふん、と笑われてエドワードが起き上がろうとして、180度以上傾いた部屋では足のほうが上に行ってしまうことにジタバタと暴れた。

「や、なんか、まずいって、これ」
「何が?」
「だって、ドア開いてこれって」

こんな狭い中でしっかりと抱え込まれたこの状況でドアが開くなんてあってはならない。

「子どもの振りをして私を誘うからだ」

まだ壁は回っているのに、マスタングはエドワードの慌てようがおかしくて、すっかり気分が戻ってきた。
暴れれば暴れるだけ小屋の傾きに押されてエドワードは意に反してこちらに倒れこんでくる。

「ま、待て!大佐なんか変なこと、か、考えてねぇか!?今!!」

倒れた先でマスタングの腕に抱え込まれぎゅっとされると、エドワードは身をよじって顔を赤くした。

「ん?変なこと?」
「―っ」

眉をふっと上げるマスタングのその表情は明らかに甘ったるい笑顔を浮かべていて、エドワードが早鐘のように高まっていく心臓に怒りを逆切れしそうになる。

「ばかやろ!場所間違えんな!」
「どこだったらいいんだ」
「ち、違うところ!」
「…わかった」

思わず発した言葉に、マスタングがぱっと快く両腕を解いてエドワードを解放する。

ガタッ

「…???」

ゆっくり小屋がもとの水平へと戻っていく中で、エドワードは自分の失言を思い返す。

「お疲れ様でした!」
「―!いてっ」

扉を開けるその明るい声に、エドワードがびくーっと驚いてマスタングから離れ、椅子に頭をうつ。

「ほら、いったいどれくらい頭をぶつければ気が済む?」

さっさと小屋を出たマスタングが座り込んでいるエドワードの手を掴んで小屋から引っ張り出した。

「〜〜ああ、もう、疲れたー」
「はは。自分が入りたいと言ったんじゃないか」

頭だの腰だのを打ったエドワードの頭を撫でながら、マスタングは声を出して笑う。
少しむっとしながらエドワードはすたすたと歩いていく。

「どこに行くんだ」
「違うやつ、乗る」
「その前に休憩を取らないか?だいぶ疲れたよ、ひとつで」

ああ、確かに、とエドワードが肩を落として足を止める。

疲れた。
頭に血が上って。
それに。

ちらっとマスタングを肩越しに見ると、なんだか嫌な予感がしてならない。

「休むって、どこでだよ」
「そうだな…」

見回してみても、どこも座れる場所もない。

「いったん、出ようか」
「…んー…」

それには少し反対の表情をするエドワードの肩をぽん、と叩いてマスタングが歩き出した。

「んー…」

素直についていけないながらに置いていかれないようにエドワードは小走りにその後を追う。





**** **


「で、なんでここか!?」
「いや、芝生だし、座れるだろう?」

移動遊園地を出て少し歩けば公園があって、そこの少し奥にある木陰に座り込んだマスタングの隣に立ってエドワードが腕組みをして不満そうに見下ろした。

こう、もう少し暖かい場所を見つけてほしかったのに。

「ほら、おいで」

おいで、と言われるのが苦手で、エドワードは掴まれる腕に力を入れて抵抗する。

「どうした?」

マスタングのそれはきっと恋人を呼ぶだけの言葉なのに、子ども扱いされているようでエドワードは素直に聞けない。

「別に」

自分ですとん、と腰を下ろし、足を投げ出して転がる。
それでも少し冷たい芝の感触は気持ちがよかった。

「今日は天気がいいな〜」

思い切り伸びをしてエドワードが青い空を見上げた。

「デート日和だろう?」
「…あ、そ」

デートだなんて自分は言ってない、という顔でマスタングを見上げると、マスタングはくす、と笑ってエドワードの髪に触れる。

「…」

蝶でも飛びそうなうららかな日和に、こんな穏やかな時間は、エドワードの眠気を誘う。

「大佐、眠ぃ…」
「風邪をひくぞ」
「えー…、じゃ、こうする!」
「うわっ」

ガシッとマスタングの体を無理やりに倒す。

「あははは。へたれが」
「っ。急に引っ張るからだろう!?」

機械鎧の腕で引き倒しておいて、エドワードは笑いながら上半身だけ起こした。

「…」

見上げるマスタングに、エドワードの脳裏を先ほどのおかしな会話がよぎる。

「―っ」

いや、待て。落ち着け。
ここで赤くなったら思う壺だ。

ひく、と引きつる口元を意識して耐えようとする。
芝生に横になったマスタングはその考えが読めるかのようにふ、と笑ってエドワードに腕を伸ばす。

「…大…」

首の後ろを掴まれ、ぐい、とマスタングに引き寄せられる。
抵抗した力で逆に勢いを殺したエドワードの体がマスタングの上に覆いかぶさる。

「…場所が、違うかい?」
「わかってんなら…放せよ」
「じゃあ、離れればいいだろう?」
「…」

ごく、とエドワードが唾を飲んでマスタングの服に埋めた顔が熱くなってくるのを堪える。
あの小さな部屋でバタバタと暴れたときに擦れ合った体が、熱を持ったのは知られていないと思っていたのに。

「…はぁ」
「エド?」

力を抜いてばったりと自分に体重を預けて倒れたエドワードに、マスタングはちょっと驚いて顔を上げた。

「…帰る」
「どうして」
「…」

ちら、とマスタングを上目遣いに見るエドワードの視線に、マスタングは軽く目を見張った。

「帰る…」
「…」

ぐりぐり、と頭を押し付けてくる態度に、マスタングの心臓が音を立てる。
先ほどの小屋で暴れたエドワードの方が自分との接触に慌てたことはわかっていたが、まさかそれがまだ続いていたことにはさすがに気づいていなかった。

「エド」
「…」
「間に合わないだろう、帰っていたら」
「…あ?」

思いもよらない言葉に、自分の意を解してくれたと思っていたエドワードが思い切り怪訝な顔をすると、マスタングはエドワードを抱えたまま体を起こす。

「何言ってんだよ…」

マスタングの表情に、エドワードは軽くおびえが走り、身を放そうとしてぐい、と顎を掴まれて重ねられる唇に大きく目を見張る。

「んん…っん、んー!」

腕をつっぱり、エドワードが逃げようとマスタングを押し返す。

「…やめろ…っ。何考えて…!」
「君と同じことだよ?」
「あ、わ…!」

それでも首の後ろに回された手で強く引っ張られ、エドワードは仰け反るようにマスタングの腕の中で唇をふさがれる。
片手がするりとジャケットの中をもぐってエドワードの体を撫でると、びくん、とエドワードが体を揺らして目をきつく閉じた。

「ん、…んん、あ、…大、佐…、やだ、何だよ…!」
「…人はいないよ?」
「そうじゃねぇって…!、―っあっ…っ」
「ん…。どうした、エドワード」

タンクトップの中を滑る手にエドワードが思わず漏らした声に、マスタングはわざとからかうように顔を寄せて聞く。

「や、ん…っ」
「そんな声を出すな…やめられなくなる」

ぐ、と奥歯を噛んで耐える声は鼻を抜けて高く響く。
すでに熱をためていた素肌に触れられると、エドワード自身が逆らっても体は反応を示す。それを煽るマスタングの笑みを含んだ声は、エドワードの心臓を鷲掴みにして
…倒れそうだ。

「場所が、違…っうん…!」

胸に達した手のひらがエドワードの突起を捕らえて、一瞬止まる。

「これは…?どうするんだ?」
「帰る…!」

くに、と押される感覚にエドワードがマスタングの服を掴んで吐息を吐く。

「帰る!」
「せっかくのデートなのに、帰ってどうするんだ」

喉の奥で笑う低い声に、エドワードは顔をそらして息を呑む。

言わせようとしているのは目に見えてわかっていた。
でも今はそれに反抗するほどの余裕がない。

「…っ。帰って…する、…したい…」

そらした顔でにらむように瞳だけこちらを見るエドワードに、マスタングの体をぞくぞくと熱いものが走っていく。
突起に触れるのが手のひらから指に変わる感触にエドワードはびくん、と大きく体を揺らしてはき捨てる。

「あ…っ、う、や…!言っただろ…!」
「ここで、…しようか」
「―!」

いつもの、疑問形でない物言いがエドワードの体を貫いてどくん、と心臓が音を立てた。

「いや、いやだ!ふざけんな!!」
「どうして」

わからないな、という顔をするマスタングはエドワードの固くなってきた突起を指の間に挟んですり上げる。

「んや…!ロイ、ロイ嫌だってば!」

名前を呼ぶほどの抵抗が逆にマスタングを煽る。

「かわいいよ、でもここだとそんな声を出すと…人がくるぞ」

ぎく、としてエドワードはマスタングの手を掴んで振り返る。

人の喧騒は遠くて、今は人影もない。
みな、移動遊園地に夢中だ。
公園で休むよりもぐるぐると回るおもちゃに振り回されている。

「ふ…っんん…っ。ぁ、や…」

腰を掴まれ胸元を転がす指に、エドワードは力が入らずに声だけを必死で抑える。

「声を抑えている分…、反応がいいな…」

マスタングの声は確実に自分の姿に欲を見せて瞳が光るから、エドワードは体の震えが止められなくなる。
自分で口にするほど求める彼のそれがそこにあって、でも理性はまだエドワードからは消えない。

「…あ、あ、ぁう…っ。も、そこやめろってば…っ」

足ががくがくとして小さな感部は体全体のバランスを崩させていく。

「どこ?」
「あ!!う、む…っ」

いきなり顔を寄せたマスタングの唇がもう片方の突起をくわえてエドワードが耐え切れずに声を上げた口を、大きな手のひらがふさいだ。

「んん…!んんー…っ」
「だめだよ?それ以上声を出したら」
「ふ!んー…!!」

片方をいたぶる手は腰に回っても、指よりも刺激の強い舌が服の上から唇に挟まれた突起をなぞり、エドワードが仰け反った。

「…痛っ…噛むかね、普通」
「…っ。これが普通じゃ、ねーだろう、が…!」

噛み付いたエドワードを抱き寄せ、マスタングはああ、そうか、とエドワードの髪を撫でて口付ける。

「やめるか?」
「…っだ、ったら…放せよ…!触…んな、んや!」

噛まれた手をズボンの上からエドワードの下肢に押し当ててマスタングは胸の突起にまた唇を寄せた。

「このままで帰れないだろう?」
「あ…っ。駄目、やめろ…!声出る…ううっ」

立ち上がりをみせるエドワードの下肢は、布越しのマスタングの指の動きを敏感にとらえて小刻みに息づく。

「おいで…」
「は、ぁ…、大佐…」
「ほら」

引かれるままにマスタングの腕の中へと倒れこみながらエドワードがその肩に口を押し当てる。

「ー!」

下着の中へと潜り込んでいく指の形がわかるほどに反応し、エドワードは大きく腰を跳ねさせマスタングの服を噛んだ。

「んん!んぅ…!ん、ん、ふ、ん!!」

マスタングの首にきつく抱きついて、与えられる刺激に足を開きながら腰が揺れていく。

「そう、自分で動いてごらん…」
「んん!」

下着の中でする濡れた音に首を振り、エドワードがマスタングの頭を抱え込む。

「あ、も、…無理…!イクッ、大佐…!」

耳元を色めいた声が跳ね、マスタングはごくん、とのどを鳴らす。

仕掛けた自分がいつも逆にエドワードの色香に惑わされるのを知っているから、いとしくて。

「ああ、エド…。君は本当に…かわいいな」

ぐい、と下着から外に開放したエドワードのきつく張り詰めた体を、節のある大人の手のひらがその先を促す術をすべて知っているかのように攻めあげる。

「あ、ああ…っっ。声、が…!」

上ずってそれでも最後の抵抗をするエドワードの目じりが微かに潤む。

「大丈夫、人はいないから」

囁かれると、エドワードは下肢から駆け上がってくる欲情に流されるように目を閉じて、マスタングの手に身を任せる。

「あ!は、うん!あ、…ああ…!んんぅ…!!!」

激しく滑らかに動く指に、エドワードがマスタングの首にすがり付いて果てた。

「…は、は、ぅ…っ」

大きく肩で息をしながら、エドワードはまだ熱い息をマスタングの首筋に吐きかけている。
頭がくらくらするような感覚にエドワードの体は言いようのない羞恥と同じくらいの快感が混じっているのを感じてぞくぞくする体に声を詰まらせた。

青空が広がる日差しの中に投げ出される夜の一片は、その後ろめたさが心臓が軋みそうな鼓動を生む。

「そら、…つづきはどうする?」

片腕をマスタングの首に回し、体を支え、エドワードはまだ濡れた下肢から手を放そうとはしないマスタングの手首を機械鎧の手できつく握った。

達した体は触れられているだけでも辛いのに、マスタングは少し力を入れようとするから、エドワードはそれを必死で止めながらもうずく体に、軽く舌打ちをした。

「…する」

小さく、でもはっきりと言い切るエドワードに、マスタングは少しの男の欲望を見た気がして自分からこぼれる吐息を知る。

「腕を回して」

震える下肢からようやく手を放して、マスタングがエドワードの背中と膝に腕を回し抱えあげようとする。

「…っ」

それすらきつそうにエドワードが体を折ってマスタングの体をぐ、と引き寄せた。

「…ここではさすがに無理だ。もう少し奥へ行かないと」
「…ん」

ここでは、あまりに公園の広場に近すぎる。

「…」

エドワードを抱え上げ、マスタングが振り返ると、まぁ、どうにかなるだろう芝の広がりをちら、と確認して奥へと歩き出す。




* * * * **


「…!てかここがどう違うんだよ!!」

下ろされた場所が、先ほどの十数メートルほどしか離れていないことに、エドワードがうなった。

じゃ、あそこでいいだろうが。

「いや?まあ、…地形を利用するのも手かと思ってね」
「はぁ?」

芝生に背をつけて横にされたエドワードの両足を体で押し広げながら、マスタングは口の片端を上げて少し笑う。

「今にわかるさ」
「…はぁ…」

疑問を腑に落ちない声に変えながら、エドワードは少し頭のほうが低いことだけが確認できる場所で、くい、と顎を上げて頭の向こうを見る。
頭のすぐ向こうは背の高い木が公園の広場への道をさえぎっていた。

「おや、余裕があるな」

その声にぎく、と顔を戻すと、マスタングの手がエドワードの両の手のひらを組むようにして芝生に押さえつける。

「…ぅ」

すでに両足を広げさせられている格好で、マスタングが体重をかけるように体を押し当てた。

「う、…やっ」

自分より体の大きい相手に押されて、少し勾配のあるこの場所では腰が浮きそうになって、エドワードが足先に力を入れてこらえる。

「そうやると、逆効果だぞ」
「え、あ、うそ…っ待っ」

ぐい、と体を揺らすマスタングがエドワードをすりあげてエドワードが目を見開く。

「……っっ」

足を突っ張ったことで逆にマスタングに腰をあてがう体勢になり、はだけたままのズボンの中でエドワードの熱は強く刺激された。
く、と紅潮する顔をしかめるエドワードの体をさらに押して足を浮かさせると、マスタングは腿でその奥をなでる。

「は、あ…っ、や!やめろ…!!手ぇ放せよ!」
「いい格好だな、エドワード」
「や、ああ…っっ」

顔を寄せたマスタングがエドワードの胸元に顔をうずめてタンクトップを器用に押し上げ、少し落ち着いていた突起に舌を這わせた。
下腹部から後方へとぴったり体をつけたマスタングが体を揺らすとエドワードの体は中心から跳ね上がる。

「それでも、あまり声は出さないほうがいいんじゃないか…?」
「無理ムリむり…!!いっぺんにイロイロすんじゃ、ねー…!変態、んん、ああ、揺らすなぁ…っばかやろ…!」

敏感な個所を集中的に揺さぶってくるマスタングに、文句を吐きつつも吐息をもらす。

「まだ余裕はあるようだな」
「ひぇ…っやめっっ。あ、あ、あ!」

その光景を見るには明るすぎて、エドワードはきつく瞼を閉じる。それがなおさら受ける刺激を予知できずに声を上げさせる。

「う、う、んん…!」

耐えられずにのけぞるエドワードのかたくなる胸の突起をざらりと舌が全体を使って濡らし、下肢は当たる布の刺激に張り詰めてくる。
マスタングがさらにエドワードの腰を押し上げて片膝に乗せた。
完全に腰の浮いた状態で、エドワードが揺すぶられる体に否がおうにも飲まれて首を振って息を詰まらせる。

「大佐…!大佐、も、やだ…!ちゃんと、して!!…やだ!!きついって、も…ぉ!」

張り詰めた下肢の奥に、マスタングの反り返りを感じるまま体をゆらされ、エドワードが苦しそうにマスタングの手を握り返す。
その手の震えに、マスタングは胸元から顔を上げると、ゆっくりと手を放してやる。

「は、は、ぁ…」

腰をマスタングの膝に乗り上げ、体は頭を下に相手をまたぐ体勢だ。

「…うっ」

後ろに回される手がズボンを少しずりさげて、マスタングの指が奥にあてがわれる。びく、とエドワードが反応して唇を噛んだ。
ひくつく感じがして自分の体が恥ずかしさに熱い。

「きれいな表情だ。…陽を浴びてなおさらにね」
「…!」

指の衝撃を待ったエドワードの体を、マスタングは足を持ち上げて腰を高く浮かせる。

「何…!」

ズボンを後ろからめくられ、体を折られることに、エドワードはマスタングのしようとしていることを察知して一瞬逃れようとしてこのわずかな坂にバランスを取るためにばん、と芝生に手をつく。

「支えていなさい」

ちら、と見せた舌に、エドワードは息が止まりそうになった。

こんな、明るい場所で。

「――あ!!」

濡れた舌の感触がして、エドワードは驚きに声を上げる。
舌がゆっくりと這う。

「ふ…ぁっ、あっ、は、は、ううん…!」

秘所の回り全体をくまなく動いていく舌に、エドワードが何度も大きく体を揺らして芝生をつかむ。

体に、力が入らない。

跳ねるたびに抜けていく力に、マスタングは満足そうに舌を這わせたまま、指を押し当てて、一気に押し込んだ。

「い、あ!!ああ…っつ…!」

指で押し広げられる箇所が、マスタングの舌を受け入れていくことにエドワードのそり上がった下肢が限界に達しそうになる。

「や、ん!!ロイ…!イク、から…!やめ…!!あ、は、や、やあっっ」

大きく仰け反って、エドワードがビクン、と体を跳ねさせ、腹の上に白濁の液体を放つ。

「…少しまだきついだろうが、もう…待てないだろう?」

根元まで潜り込ませて中を擦った指を引き抜き、マスタングがエドワードの腰を自分の膝におろしてやる。

「ん…、も、やだ…っ」
「何が、嫌?いらないかい…?」

ゆっくりと自身を衣服から解放したマスタングはエドワードの顔を覗き込み、ズボンが下ろされたエドワードの足の間にそれを押し込む。

「やだ…っ」

腿に当たるそれはエドワードの果てた下肢にすり合って濡らされていく。

「いや…?」

マスタングが甘い声でエドワードの耳元でささやく。顔をそらしていたエドワードはその声に薄目を開けてマスタングを覗き見る。

「も、待たすなよ…!わかってんのに…!!」
「嫌だと言うからだろう、その口は意地っ張りで、困る」

くすくす笑う彼だって、押し当てる力の強さを感じるだけ、エドワードの体を割りいりたいはずで、エドワードはぐ、と息を飲んでマスタングの肩に手をかけて覆いかぶさる彼を引き寄せた。

「入れたいくせに…」
「言うようになったな」
「ん!う…!!」

ぐん、と先端が先走りの潤いも含んで舌で濡らされたエドワードの体の押し開いた。

「欲しいと言えばいいのに」

は、と息を吐いて、エドワードのきつさに耐えてマスタングが唇を寄せる。
互いの天邪鬼さを責めあう言葉は同じだけ相手を色めかせる。

「あうっ。くるし…っこの、体勢辛い…っ」

それをよけるように首を振っても、マスタングは膝に乗せたエドワードの足を体のほうへ折らせてさらに体を進める。

「やだ、何か、怖…い、うあ、ん!!」

体の位置がいつもと違うことに、不安を震えで示すエドワードの唇を探り当て、マスタングは優しく口付けてやる。

「大丈夫だから、力を抜きなさい。…かわいいな、震えて」
「ロイ…っや、何かムリ…!」
「何が…・」
「あ、あああっっ」

ぐぐぐ、と押し込まれるそれが、いつもより硬さも大きさも増しているようで、それに深く入り込む感じが、エドワードの不安をあおる。

「変…!当たり方が違…うう、あ!」

最後までは押し込まずに、マスタングはぐい、とズボンを下着ごとはぎとって足を広げさせた。

「当たり方が、いい、だろう。言葉は正確に使いなさい。ほら…動くぞ?」
「ば、か!−!あ、ああ、やん!!いやだ…!!ああっ」

やさしい前置きとは逆に、エドワードの両脇に腕をつき、マスタングがエドワードの浮いた腰を軽く揺さぶる。

こちらとしても、実に余裕なんてものは欠片もないのだ。

少し舌打ちをして、ぐん、とマスタングが体を奥までねじ込む。
それだけで、体にくる振動の大きさにエドワードが理性を飛ばしそうになった。

「く…っ。締まりが…」

きついのはエドワードの腰がこちらの動きで上下に大きく揺さぶられるから。

「大佐…ぁっ。あ、ああ、はう…っ」

ぎゅ、とマスタングの腕を掴んで揺さぶられるエドワードが体をそらせてなお締め付ける。

「ああ、あ、あ、ああ、はぁ、んんっっやああ…!」

マスタングが体を倒し、攻め上げながらエドワード自身に腹の筋肉をすり当てると、エドワードの声がいっそう高くなる。

「もっと、欲しいか…、エドワード。…言ってごらん」
「んん!!」

マスタングの体を走る鳥肌にも似た悦楽が吐き出す言葉の上ずりに見せる欲の色が、エドワードの理性を奪う。

もう耐えていられない。

何度も突き上げられていくと、エドワードの強い刺激にも満たされないもどかしさが苦しさに変わっていく。

「ロイ…!!も、と、強く…揺らして…!!」
「ああ、いい子だ…」

悲鳴にも似た声が、マスタングの強い欲望をかきたて、満足させる。

「んああっっ」

マスタングが一気に体の動きを大きくする。エドワードの宙に浮く足がそれを受けて揺らされ、激しい刺激が襲う。

「い…!ああ!!あう…っっ。も!駄目…!!うあっっああっ!!」

がくがくと突き上げられ、ゆすぶられて、エドワードがもうそれに溺れるように体を貫く熱を放って、意識を飛ばした。

「…く、ぅ…」

マスタングがその衝撃にきつくなる締め付けに顔をしかめ、軽くエドワードの体を揺らし、自らの熱をエドワードの中へと放つ。

「…、ぁ…、ぅ」

エドワードが小さな声を漏らして体をひくつかせる姿をマスタングは大きな息を吐いて見下ろす。

「…本当に、いい眺めだ」

ふ、と笑う声もエドワードの意識に届かないほど、エドワードが余韻の中に浸る。

「とんだ移動遊園地だな」
「―!ふざ、けんな…!あっ、や…!!」
「…っ。こら、締めるな…っ」

まだ沈ませられていた体に、エドワードがぶるっと震え、マスタングがその締め付けに仰け反ってエドワードの腰を掴む。









→ あいや〜(^^; すいません。いや、いやいや。
せっかくリザちゃんからお休みを頂いたはずなのに、結局お外でえっちしてるだけじゃんかよ…大佐。
デートはどーした!!
ごめんなさい。
MAGU


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