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次の日の早朝、新衛門と斎藤、そして竹中は例の部屋で向き合っていた。

そして、斎藤が中心となって昨晩の田中とのやり取りを竹中に報告する。

竹中は、只ふんふんと頷きながら聞いていた。

そして、一通り話し終えた斎藤がふっと一息着くと、竹中は新衛門の方を向いて言った。

「織田殿、如何でしたか?何か感じた亊はありましたか?」

急に言葉を掛けられた新衛門は、多少焦りながらチラリと斎藤を見る。

斎藤は、そんな新衛門に軽く頷いてみせた。

そんな斎藤の様子に励まされるように、新衛門は、小さく息を吸い込むと、竹中に向き直って言った。
「何がどうとは言えませんが、田中様は確かに何かを抱えておいでのようでした。それが例の辻斬りの件なのか、違う亊なのか……しかし、田中様は普通では無かった、と私は感じました」

「そうですか。何かを抱えている、そう感じましたか」

竹中は軽く頷くと、今度は斎藤の方を向いて言った。

「お話を聞いた限りでは、田中殿が何かしらの問題を抱えている亊は確かな亊のようですね。お二人は引き続き、他にも何か辻斬りに関する話しが無いか、調べを進めて下さい。実は、私にも、ちょっと気になる話しがあるのですよ。だから、私は私で動いてみるつもりです」

そう言って竹中は「伊助、入ってきなさい」と声を上げた。

突然出てきた伊助の名前に、驚く斎藤と新衛門が障子に目を移すと、「へい」と、あの伊助が顔を覗かせた。

「伊助、聞いていた通りです。例の話し、調べを進めてみて下さい」

竹中の言葉に伊助は「へい、承知いたしやした」と頷くと、斎藤と新衛門にも軽く会釈をして、スッとその場を離れていった。

斎藤はポカンとして、その様子を眺めていたが、つと我に返ったように竹中の方に向き直ると、「竹中様、いったい……」と、問いかける。

竹中はニコニコと笑いながら「私だって、ただ黙ってお二人の報告を待っている訳ではありませんよ。老中片倉様の御名前が上がったとなっては黙って見てはおれませんからね」と言った。

「しかし……竹中様」

何か言いたげに、が、言葉が見つからないといった風情で言い淀む斎藤に竹中は相変わらずニコニコと笑いながら言った。

「気にする亊はありません。私の話しはまだまだ形に成らない話しです。お二人はお二人で調べを進めて下さい。田中殿はいったい何を抱えているのか、それが義重様が辻斬りをしたという亊に繋がるのか、ここが正念場ですよ」

そう言って、真な面持ちになった竹中は、じっと二人の顔を見つめた。

斎藤と新衛門はその眼差しに、幾らか緊張した面持ちで「はっ」と頭を下げた。

そして、顔を上げた斎藤は、真っ直ぐに竹中を見つめると「重々承知致しました。間違いの無いよう、心して調べを進めます」と言った。

「頼みましたよ」
竹中はそう言うと、立ち上がって、部屋を出ていく二人を見送った。



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