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そして、彼女が‘飛び下りてきた’階上を静かに見上げる。

螺旋状に繋がる階段が、天井の黒いシャンデリアの輝きを帯びて異様な雰囲気を醸し出していた。




先程、彼女がいたサードフロアに当たる2階は…どう見ても、簡単に人が飛び下りていい高さでは無かった。






「いつか勝手に殺されてても知らんからな」


しかし

そんな行動に眉をひそめたアダムを余所に、カオリは平然と立上がり手をパンパンと払う。





「…いつか、勝手に足の骨が折れても知りませんよ」




「そんなヤワじゃねぇよ」


そう言い返したアダムを、カオリは軽く鼻であしらう。



全く‘忠告’と言うものに聞く耳をもたない彼女は、どこまでもその顔に余裕の笑みを見せつける。







「あぁー、確かに“的外れ”だな」


嘲笑めいた声音でそう言って、すでに事切れている男の眉間からそのナイフを抜き取る。



その瞬間、大量に吹き出す血しぶき。






「“真ん中”より1ミリずれてる」


全身に赤い飛沫を浴びながら、彼女は笑う。



Yシャツに残されていた白いカ所も、どんどんとその赤に染め上げられていった。








その血のシャワーが終わる頃には、彼女の全身は罪の色に染まっていた。




嗚呼

これで本当に、Yシャツが一枚ダメになったな……と、アダムは溜め息を吐く。


“所々”なら、まだ誤魔化しようがあったものを…






「“どれ”だ?」


ダガーについた血液をその真っ赤な舌で舐めとりながら、カオリは短く聞いた。






「…ウェスク様ですね」


その問いに、屍と化した男の髪の毛を掴み上げながらアダムは答える。


その首筋に見えるのは、クロイツ家の血筋“それぞれ”を表す焼印。





「何だ、1番上の義兄貴じゃなかったのか」


拍子抜けしたようにカオリが問い返して来たのは、その名が2番目の義兄のものだったからだ。




「残念ながら」


何か身元を調べるモノはないかと、アダムは男の体をまさぐりながら手短に答えた。






「チッ、何だよ。つまんねぇなぁ、そろそろあの義兄貴とも遊びたいぜ」




「カオリ様が、この間手加減しなかったので驚いたんではないんですか」





「ヘッ、女だと思って甘く見てるからそうなるんだよ」


そう言って上機嫌に笑う彼女の瞳は、玄関ホールの正面の壁に飾られている一枚の人物画を捉える。




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