光子郎×ミミ
「光子郎君! じゃーん!」
いつものごとくパソコンに向かい合っていた光子郎は、これまたいつものごとくテンションの高めな恋人の声に振り返る。その視線の先には嬉しそうな顔をしてお菓子の箱を見せつけるミミ。
「……なんですか」
ミミが持っているのは世間でも一般的に広く食べられているチョコレート菓子―――ポッキーだ。
「今日は何の日でしょう?」
「……ポッキー&プリッツの日ですか?」
「ピンポーン!」
「はぁ……」
ここまでくれば鈍い光子郎といえど、だいたいの流れは想像がつく。
「というわけでポッキーゲームしましょ?」
やっぱりそうなりますよね。内心で呟いて、なんとかミミの提案を回避するべく光子郎は言葉をひねり出す。
「僕、チョコレートあまり好きじゃないんです」
「えっ」
出てきたのは何となくそれらしい断り文句。光子郎の返事にミミは驚いた声を上げた後
「そうなの……?」
と、先ほどまでの様子が嘘のように意気消沈した。
「それならしょうがないわよねっ。もったいないから、食べちゃおーっと」
しかしシュンとした様子も束の間で、光子郎に気を遣わせない為か、明るい調子でミミが言う。
「ミミさん、あの」
思いのほか落ち込むミミに、光子郎もさすがに良心が痛んだのだろう、気まずげに頬を掻きながらミミに声を掛ける。
「ん?」
光子郎の呼びかけに、ポッキーを一本くわえたままミミが顔を上げる。
「チョコレート、は苦手なので」
「?」
「ここだけ貰いますね」
そう言うやいなや、ミミがくわえているポッキーのチョコレートがついていない部分だけをかじって、そそくさとパソコン作業に戻る光子郎。
「ごちそうさまです」
パソコン画面と向かい合ったまま呟いた光子郎の言葉に、呆気に取られていたミミはハッと我に返る。
「こっ、光子郎君!」
元のように瞳を輝かせて、ミミが光子郎に抱き付く。
「今の! もう一回!」
「えぇ!?」
「ね? お願い!」
「勘弁してくださいよ……」
そう言いつつも、わくわくした顔でポッキーをくわえて待つミミを見ると、無碍には出来ない光子郎だった。
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