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トーマ×知香(知香、中学生ver.)
「怒ってる?」

「…………怒ってないよ。」






逢瀬







「ただ、忙しいんだなぁと思っただけ。」

カップルで賑わう喫茶店で、向かいに座っている年若き少女は、言うなれば妹のような年齢。実際のところ、端から見れば兄妹にしか見えないのではないだろうか。現に彼女には僕と同い年の兄がいるくらいだし。

「まぁ毎年、七夕くらいしか会えないっていうのも織姫と彦星みたいでいいかもね?」

すっかり氷の溶けてしまったアイスティーを一口飲んで、彼女は続けた。

「悪かったと思ってるよ。」

何と無く決まりが悪くて、視線を合わせられずに言葉を発する。
彼女が中学にあがったころから、会おうと思っても、なかなか時間が合わなくなってきた。彼女は学校、僕は任務。

電話などで連絡はとっていたけど、やっぱり彼女は彼女なりに寂しさも感じていたらしい。もちろん、それは僕も一緒だけれど。
それでも、この七夕の日だけは、必ず会うことにしていた。数年前からの約束。

だが、今日は

「いいもん、別に。一時間待たされたくらいで怒らないよ。」

そう、彼女との待ち合わせに、あろうことか一時間もの遅刻をしてしまったのだ。

その原因は、と言われれば、彼女の兄が無駄に仕事を増やしたからなのだが、今更そんなことはどうでもいい。彼女の機嫌を直す方が先決だ。

「本当に悪かったって!あ、そうそう、今日は知香ちゃんの為に、凄く見晴らしのいい展望台を見付けたんだ。ご馳走もするし、ね、機嫌直してくれないか?」

なかば必死で言葉をまくしたてる僕を彼女は少しの間じっと見つめ、その後に小さく溜め息をついた。

「わかってないなぁ、トーマ君。」

ほとんど残っていない氷を、ストローでもて遊びながら彼女が呟く。

「織姫はさ、彦星に会えるだけで十分、幸せなんだから。」

そう言って僕を見ると「会えて嬉しいな、彦星様。」と悪戯っぽく笑った。

その笑顔に面くらいながら

「……あ…ああ、そうだね。織姫様……?」

なんて照れ臭いながらも、笑みを返した。

健気な彼女を見つめながら、もう少し会える時間を作ろうと心に誓った。







「でも、せっかくだからご馳走してもらおうっと。」

「はいはい。」

二人の七夕はこれから。



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無理矢理感が否めない…!


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