タケルとヒカリ
※タケルがヒカリ以外の人を好いたり、付き合ったりしているのでご注意を。
好き、ってどうすれば伝わる?
恋の苦しみ
「また振られたの?」
呆れたような、それでいて同情するかのように彼女が問い掛けてくる。
「……」
問われた僕は、彼女が淹れてくれたお茶を飲みながら、少し返答に困って黙り込んだ。それは暗に肯定を意味しているのだけれど。
「今度は何が原因?」
「……知らないよ」
ふてくされた返事になってしまったのは許して欲しい。だって本当にわからないんだ。
「高石君は私のこと好きじゃないんでしょ! ……って、いつものパターン」
勝手に決め付けて、泣きながら一方的に別れを告げて去っていった。僕の話なんか聞く気がないみたい。
「なんでみんな同じこと言うんだろう? 好きじゃないのに付き合わないと思うんだけど」
もう慣れきってしまうくらいに、同じセリフで振られてる。僕ってそんなに愛が無いのかな。
「タケル君の言うこともわからなくはないわ」
苦笑気味に彼女が言う。なんだかんだで、彼女は僕のことをよくわかってくれている、と思う。
「でも、その子の言うこともわかるのよね」
「えぇ?」
納得できなくて、思わず不服な声をあげてしまう。
「ちゃんと彼女のこと構ってあげてたの?」
「もちろんだよ」
少し強めの語調で肯定すれば、本当かと疑うような視線を向けられムッとする。
「デートしたいって言われれば、時間空けてデート連れて行ってたし、キスしてって言われればしたし、好きかって聞かれれば、好きだって答えてたよ」
元彼女との日々を思い返しながら、順にエピソードを並べていく。そんな僕に対して、向かいに座ってそれを聞いていた彼女は、わざとらしく溜め息を吐いた。
「そんなことだろうと思ったわ」
「……どういう意味かな?」
溜め息を吐かれるなんて心外だと、少し苛立ちを表す僕に向かって、同情するかのような笑みを零すと彼女は立ち上がった。
「タケル君って、意外と子どもよね」
「はい?」
「女心がわかってないんだもん」
「そ、んなこと……」
ない、とは言い切れない。事実、そう言われて振られたこともある。だいたい今だって、振られた原因、よくわからないし。
「タケル君ってば鈍感だから」
「う……そう、なのかなぁ」
「そうだよ」
さらりと告げて、彼女は台所へと姿を消した。僕は、一人になったリビングで、先ほど彼女に言われた言葉を反芻する。
「女心かぁ……」
それってどうしたらわかるようになるんだろう。もっと大人になれば自然とわかるようになるのだろうか。
「恋って難しいなぁー」
何度目かわからない溜め息を零して嘆く。本当に、どうしたら伝わるんだろう。好きだって思ってるだけじゃ駄目なんて難しいよ。
「…………次こそ頑張ろ」
今度こそ、大好きだって気持ちを伝えられるように。そんな事を考えながら小さく拳を握る。
恋の苦しみ
(ちゃんと君を愛したいのに)
「まったく……いい加減に気付いてくれないかなぁ」
「ん?」
僕を見つめて小さく呟いた彼女の言葉は僕には届かず。もの言いたげな彼女の視線に首を傾げた。
「はぁ…」
「?」
彼女の視線の意味に僕が気付くのは
もう少しだけ、先の話。
アネモネ
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