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ハルツナ
 ツナさん、大好きです。



 彼女はいつも、そう本当にいつも、俺にそう言ってくれた。それは黒い世界に投げ込まれた一滴の白い雫。美しく、溶けるように俺の心に波紋を広げていく。

「ツナさん!」
 俺を見つけると、瞳を輝かせ、春に芽吹く花のような笑顔を振り撒く。同じクラスのあの子を見る時も、こんな感覚だったなと、考えてハッとする。

「なんで京子ちゃんと重ねるんだ!」
 ハルはハルだし! だいたい何で過去形なんだよ、俺が好きなのはずっと京子ちゃんじゃないか。

「ツナさんに会えたから、今日のハルは一日中ハッピーです!」
「お、大袈裟だろ……」
 当たり前みたいに隣に並ぶハルが嫌じゃない。こんな風に大袈裟に(本人は真面目なんだろうけど)俺への好意を示すハルを、疎ましく感じなくなったのはいつからだっけ?

(あれ……?)

 おかしいな。俺、なんでこんなに

「ハルのことばっか考えてんだ?」
「はひっ?」
 隣で彼女が独特な声を出す。

「ああ、いや、何でもないよ」
「え、でもツナさん、今、ハルの名前呼びましたよね?」
「よ、呼んだわけじゃ……」
「じゃあ何ですか!?」
「う……」
 ハルの澄んだ黒い瞳が真っ直ぐに俺を見つめていて、思わず言葉に詰まる。ああこれはヤバい、この感覚は、

「はっハル、ほら、学校あっちだろ!? 分かれ道だから、ほら! 早く行かなきゃ遅刻だぞ!」
 まくしたてるようにそう言って、ハルの学校の方を指差す。お願いだから、早く行ってくれ、じゃないと……

「遅刻なんて構いません!」
「俺は構うの!」
「ツナさん、いつも遅刻してるじゃないですか!」
「そーいう問題!? ってゆーか何で知って……っああもう!」
「あっ!」
 耐えきれなくて走り出す。並中へと続く道をとにかく走る。

「……っは、」
 体力の限界が来たところで、後ろを振り返る。良かった、追い掛けてはきていないみたいだ。

「はぁぁ〜……」
 ずるずると近くの塀に寄りかかり、そのまま地面へと崩れ落ちる。

「勘弁、してくれよ……」
 頼むから早く、俺の側から去って行ってよ、ハル。じゃないと……

「好き、かも……しんない」
 見てみぬ振りしてきた気持ちに、気付いてしまいそうだよ。









リナリア



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