タケヒカ大3
※この話はこれの続編の続編になります。
「ねぇ大輔君」
「なんだよ」
「まだ怒ってる? 今朝のこと」
「べっつにー」
学校からの帰り道。
答えながらそっぽを向く大輔君。
うーん、やっぱり怒ってるかな。
「ごめんって」
「別に怒ってねーって」
「怒ってるじゃないか」
「……」
今朝のこと。
ヒカリちゃんと二人で大輔君を少しからかいすぎてしまった。そんなに怒らすつもりはなかったんだけど、つい。
「ってかさ……」
「うん?」
ちらりと大輔君が僕に視線を送る。何か言いたそうな、そんな目。
「なんでそんな俺にかまうんだよ」
「……それは、」
まっすぐに見つめられて思わずたじろぐ。嘘をつくことを許してくれないような、彼のこの目が僕は時々苦手だ。
「言ったじゃない? 大輔君のことが大好きだからだって」
微笑みを作って答える。もちろんこの場合の「好き」は、友情の意味での「好き」だ。
「大好きだから、ね……」
「大輔君?」
何かを考えるように呟く彼に、少し不安になる。本当はいつも怖れているんだ、彼に拒否されやしないかって。
「まーいいけど」
そう言って話を終わらせる大輔君。あ、これはちょっとツラい。
「怒った?」
「はぁ?」
僕の問い掛けに大輔君が眉を顰める。あ、これは本気で嫌がってるかも。
「なんなんだよお前。なんか最近、変だぞ」
「……」
訝しげに大輔君が問うてくる。
「妙に俺にかまうっていうかさー」
だって怖いんだ。君が離れていってしまう気がして。
「話し掛けてくること多くなった気ぃするし」
いつも一緒にいないと不安で仕方なくて。今日も君は、友達でいてくれるのかなって。
「まーなんつーか……」
だって、君は
「ヒカリちゃんが好きなんでしょう?」
「は?」
「……」
不安だった。 ヒカリちゃんに告白して、付き合うことになって、それでも君は僕と友達でいてくれるのかなって。僕のこと憎んで、嫌いになってしまうんじゃないかって。
「なんかよくわかんねーけど」
「うん、僕もよくわかんないや」
自嘲気味に笑う。
大輔君からしてみれば、本当にワケがわからないだろうな。僕がこんなこと考えてるなんて、言ったこともないし。
「俺は、ヒカリちゃんが好きだ」
「……うん」
歪んだ顔を見られないように下を向く。ああ僕、今きっと酷い顔してる。
「でも、お前も好きだ」
「え……」
思わず顔をあげる。照れたような、むずがゆいような顔をした大輔君が視界に入る。
「もちろん友情的な意味でなっ!」
付け加えるように言って、呆然としている僕を見ると若干あきれたように溜め息をついた。
「なに変な顔してんだよ」
「え、あ、いや……大輔君が素直だからビックリしちゃって」
「……お前な、」
素直じゃねー奴、と呟いて僕を見据える大輔君。
「だいたいなぁ、いちいち好きだのなんだの言うもんじゃねーよ」
吐き捨てるように言って、さっさと歩き始める。その姿を見ながら、なんとなく動けないでいる僕を振り返ると、大輔君は笑った。
「言わなくても伝わるもんだろ、友達ってのはよ!」
ああ、君はどうして。
「友達……」
「あ?」
「大輔君、僕は君の友達かな?」
「はぁ? なんだよ今更、気持ちわりぃな」
当たり前のように、受け入れてくれるんだろう。
「ありがとう、大輔君」
「あ?」
「ううん、なんでもないよ。さ、早く帰ろう」
「なんだよ、急に元気だな。変な奴ー」
彼女への恋心は止められなくて。
でも、君の友達でいられなくなるのは怖くて。
僕は本当に身勝手で。
でも、君は差し伸べた手を引っ込めることはしなかったから。
「君が君で良かった」
明日もその次もずっと。
君と友達でいられますように。
切なる願い
「つーか、俺、ヒカリちゃんのこと諦めてねーし」
「えー」
「だから、友達でありライバルってことだな!」
「友達としては申し分ないけど、ライバルとしてはなぁ……」
「おい!」
霞草
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確信犯で余裕そうに見えるけど実は臆病なタケルと、振り回されてるように見えて実は相手を支えてる大輔、みたいな。
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