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タケル×ヒカリ
「身勝手だよ」
 道の小脇。隣に居る少女に向かって少年は言い放った。

「そんなの身勝手だと思う」
 少年は言葉を続ける。彼が言っているのは、先刻、少女が話していた内容についてだ。

「身勝手って………勿忘草が?」
 少女が話していたのは勿忘草の花言葉。帰り道に勿忘草を見つけ、何の気無しに少年に問い掛けたのだ、勿忘草の花言葉を知っているかと。

「私を忘れないで、でしょ? そんなの都合良すぎるよ」
 しゃがんでいる少女に対し、少年は立ったまま勿忘草を見つめる。

「忘れて欲しくないなら、最初から離れなければいい。離れてなお忘れないで欲しいなんて、相手を縛るだけだよ」
 単調な物言いで、しかし僅かに眉間に皺を寄せて少年が言い捨てる。

「……タケル君は、忘れられてもいいの?」
「自分勝手に相手を縛るより、よっぽどマシだよ」
 苦々しげに発せられる言葉は、彼の本心だろうか。考えながら少女は目の前の勿忘草を見つめた。
 かすかに風が吹き抜け、少女の髪と勿忘草を揺らす。少年はわざと勿忘草から目を背けるようにしながら、依然として立ったまま。

「……私は忘れて欲しくないな」
 互いに沈黙の状態が数分続いた後、少女は静かに、しかしはっきりと呟いた。少年は小さく反応を示したものの、黙って少女を見つめる。

「勿忘草の花言葉は確かに“私を忘れないで”だわ」
 すっと立ち上がり、真正面から少年の視線を捉えると、一歩、一歩と少年の元へ、少女は歩を進める。少年は近づいてくる少女を身動きすることなく見つめる。

「でも、それはきっと相手を縛り付けるようなものじゃない」
 そう言うと少女は、そっと彼の手を握り、微笑みかける。

「こうして手を繋ぐみたいに、優しいものだわ」
 不思議そうな顔をして少女を見つめる少年に、少女はまた笑いかけると繋いだままの手を引いて走り出した。いきなりのことにとっさに反応出来なかった少年は、危うく転びそうになりながらも、少女に手を引かれるままに走る。

「もしも私がタケル君と離れることになっても、私は確かにタケル君を好きだったよ!」
 くるりと方向転換して、少年に向きあった少女は、満面の笑みでそう言い放った。唖然としていた少年は、やがて苦笑混じりに頷くと

「ありがとう」
 そう言って、少女の手を強く握り直した。



私を忘れないで

(それは包み込むような愛情
貴方は確かに愛されていました)







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後半わかりにくいですかね…;



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