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丈ハピバ
6月24日。
今日も、もうすぐ終わりだという夕方。

夕陽が沈んでいく空は、もう夜の準備をしている。

朝から出掛けていた僕は、家の玄関前に人が座り込んでいるのに気付いた。

「おかえりー。」

僕の姿を見ると軽く手を振って立ち上がる。暗がりで顔は良く見えないが、声や雰囲気、なによりその重力を無視したようなボリュームのある髪型から、誰なのかは容易に理解できた。

「何やってるんだい?太一。」

静かに呼びかけると、ははっと軽く笑って太一が近付いて来る。そして

「丈を待ってたに決まってんだろー。」

と言うと、手にもった袋を掲げ

「誕生日おめでとー、丈。」

と笑った。









「来るなら来るって言ってくれれば良かったのに。」

太一を家に上げると、コップに冷えた麦茶を注いで彼に手渡す。

「んー?まぁいいじゃん。突然来て驚かしたかったんだよ。」

受け取ったコップに口をつけ、一口飲むと、太一はそう言って笑った。

「まったく……風邪でもひいたらどうするんだい?梅雨時だっていうのに傘も持たないで……」

ぶつぶつと呟く僕の側で、太一は片耳を塞ぎながら苦笑いをしている。

「いいじゃねーか!細かいこと言うなよ。」

コップをテーブルに置いて、太一が面倒臭そうに言葉を放つ。

「仕方ないなぁ……。」

小さく溜め息をつき、太一の向かいに座る。と同時に玄関の呼び鈴が部屋に響く。

「客……?」

こんな時間に誰だろうと思いながら、さっき下ろしたばかりの腰を上げ、「ちょっと待ってて」と太一に言い残し、玄関へと向かう。

「はい。」

とドアを開ければ、立っていたのは長身の男。夜でも良く映える金色の髪から、すぐに誰であるのか連想できる。

「どこのモデルが来たかと思ったよ、ヤマト。」

その長身とビジュアルで、手に小さな箱を携えている姿は、正直なところ不似合い極まりない。いや、彼の性格を知っていればピッタリと言えなくもないのだが。

「丈、今日、誕生日だろ?これケーキ作ったからさ。」

彼の料理の腕はプロ級と言ってもいいだろう、しかも家事全般こなせるというのだから頭が下がる。





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